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魔獄の新天地(綺羅光)を読んだ

最近のフランス書院の表紙の絵柄、迷走してる気がしません?昔の表紙はちょっとバタ臭くはあったかもしれないけどもっともっとエロかったよね。綺羅光でいうと「美畜! 地獄の招待状」とか「女教師・私生活」とかさあ。

いいよね、こういう表紙。

まあ、謎の目と鼻と口しか描かれて無くてこええよ、みたいな表紙もあったけれども。


でも最近のは今回のもそうだけど薄いのが多くてさあ。視線はどこ見てるか判らないし美人なのかもよくわからないよ!みたいになりません?薄味というか。エロく、ない、よね…?こういうの↓

なんか規制とか色々あるのかもしれないけれど、俺の愛する官能小説家の大事な小説をもっと引き立てるような絵柄と気合の入った表紙を望みたいなーという気持ちはあります。

まあでも、そんな中でもフランス書院文庫X版は表紙は頑張っているとも思います。ちょっとオシャレな感じでね。


で、綺羅光ですよ。僕は中学生くらいから読み始めて別名義含めて多分ほぼ全部読んでると思います綺羅光。綺羅光と荒木飛呂彦とスティーブン・キングと山本直樹と藤沢周平は出した本全部読んでる。多分。

綺羅光は凌辱小説の大家の人です。
あのですね、官能小説には大きく2つのパターンがあって、凌辱小説と呼ばれるものと誘惑小説と呼ばれるものがあるんですね。文字通り女の子が凌辱されるのか(凌辱小説)、女の子が誘惑してくるのか(誘惑小説)の差なんですけど。
シチュエーションだけじゃなくて、凌辱小説はセックス描写が3人称で女性側視点が多く、誘惑小説の方は男性視点で描かれる事が多い、みたいな違いもあったりします。
時代によって流行り廃りはあるのですが、近年は誘惑小説全盛期といってもいいんじゃないですかね。凌辱小説は本当に少なくなりました。ここ数年、最近、ちょっとやや盛り返してる所もある気がするんですが、少なくともここ10年20年のトレンドは誘惑小説で、凌辱小説を書いていた人で誘惑小説にほぼ完全移行しちゃう人も沢山いました(北山悦史、巽飛呂彦とか)。北山悦史なんかはNTRモノの基礎となるような、NTR好きからは神聖視されてもいいくらいのものを何作も書いていたのですが、もうすっかり『人妻 脱ぎたての下着』とか『兄嫁』とか書いてるのそんな感じですね。

そんな中、綺羅光は別名義を除くと一貫してほぼ凌辱小説を書いている人です。しかもコンスタントに。
綺羅光の良いところってのは追々いつか細かく語っていきたいけど、まずはハード過ぎないという所があります。

やっぱり凌辱モノって、行き過ぎがあるんですよね。その人の性癖が出るのは勿論なんだけど、どんどんどんどん攻撃的になってしまう。女の子を悲惨な目に合わせれば、やっつければやっつけるほど良い。みたいなバランス感を崩した作品が割と凌辱モノにはあるんです。

でも、綺羅光はほどほどなんだよね。状況は酷かったりするんだけど、描写が比較的マイルド。女体に対する攻撃性が無いんだよね。女性の体に不可逆的な被害を与えようとしない。怪我もさせない。これでもかと辱めても、どこか遠慮がち。それが丁度いいんです綺羅光。

例えば俺の好きな凌辱小説家に草飼晃って人がいて、この人の初作品は傑作中の傑作で俺の中でオールタイム・ベストとも言えるものなんだけど、この人は作品を出すにつれ女性の体に凄く攻撃的になっていってる感じがするのね。怪我をさせる、ダメージを与える、とかそういう方向に筆が向いてる感じがするのよ。それはそれで悪いわけじゃないんだけど、綺羅光には凌辱小説でありながらそういう攻撃性が絶対になく、故に安心して読めるって所があるんです。

要はさ、ホラーを読みたいわけじゃないわけ。俺は。エロ小説を読みたいの。そういう所でちゃんとホラーに踏み出さないでいてくれる、ご家族で皆で見ても安心、みたいな所が綺羅光作品のいいところなんです。

この、ホラーじゃないけど凌辱小説が成り立ってる作家って、意外と少ないと思います。綺羅光はできてます。「おらあ!しゃぶらんか!!」と言ってヒロインにビンタをしても鼻血が飛んだり顔が腫れ上がったりはしない。判ります?なんていうの、アクション映画の殴り合いシーンみたいな感じ。『実際は当ててないよね。プロだもんね。』みたいな。そういう感じがあるのよ。アクション映画であってホラー映画ではないっていうそこの線引きが絶妙。

あとね、綺羅光は1985年からエロ小説書いてる人なんだけど意外と世の中の流行り廃りに乗っかってきてカワイイってのもあります。やっぱ勿論ね、古くさいんだよ。そういう所は随所にある。男キャラとか。不良像とか。でも、なんか頑張ってるんですよ綺羅光。寝取られが流行ったらなんとなく入れてみたりとか、1990年代終わり頃の作品だと不良がチーマーだったりとか。なんか頑張ってるんです。入墨とかもちゃんとタトゥーって書いたり、色々と『今』を描写するのを諦めてない感じがカワイイんです。いや官能小説って意外と諦めてるんですよ。読んでて『今の女子大生ってこう…ですかね…』みたいな、もうこのキャラクターを女子大生として見るのはちょっとキツい、コスプレ感あるわみたいなのも結構あるわけ官能小説って。『30年前の女子大生像ですけどそこら辺は読者の皆様の方で置き換えよろしくお願いします』みたいなの結構いまだにあるのよ。ボディコンみたいな。

そこを諦めてない感じがカワイイんです。

今回の魔獄の新天地なんかも、ヒロインは古い政治に躊躇なく足を踏み込んで切り開こうとする新進気鋭で理知的でリベラルで環境問題に関心を持つ若くしてイベント会社を立ち上げた20代女社長なんですよ。クラウドファウンディングとか出てきちゃうんだよ。凄くないですか?頑張ってるう綺羅光。

御大がそこまで考えてくれたら読む側もそりゃ多少古い描写があってもちゃんと読もうってなるよね。『わかりましたよ、ヒロインがスナックでカラオケでデュエットさせられる描写はちょっっと古い感じはするけどそこはちょっと今風のつもりで読み替えときますわ』ってなるよこっちも。協力しようって気になるよね。

全体的に2017年位の作品からややパワーダウンが目立つ気がしなくもないです(『インテリ美人弁護士、堕ちる』は良かったけど。)。凌辱女学園や淫猟夢みたいな超大作をまた書いて欲しいという気持ちもあります。でもね、俺は買い続けるよ、綺羅光。死ぬまで頑張ってくれよな綺羅光。な。愛してるよマジで。

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