205.ドタキャン

タイトルの通り、当日の朝に１日デートがキャンセルになった。

ずいぶん前から決めていた、平日に休みをとってデートに行くプランだったけど、彼の急な体調不良でなくなった。

彼は２日連続で飲みに行っていた。昨日も連絡が来たのが２３時過ぎで、「疲れた」「明日の朝起きたら連絡する」とメールがあって、待ち合わせの時間も場所もちゃんと決めないまま当日を迎えた。一応、行き先（エリア）は決めていたけど。

私は出社する体で家を出たけど彼からは連絡がなく、私から「今日どうしますか？」とメールしたら、
「早くて８時には出られるかと。」「体調不良です」としばらく経って返事が来た。

いやいや、体調不良なのに来るんかい！さすがにデートできないでしょ、と思って電話したら、声はガラガラで咳をしていた。
「体調悪いなら無理しなくていいですよ」と伝えると、「なんでですか？」と意外な返答が来たけど、咳もひどいし楽しめないだろう。
「体調悪いならやめましょう」と、電話を切って、その後に「申し訳ない」と一言メールが来た。
「休暇撤回して午後から出社しますね。」と返した。

私は本当は休めない日だった。ずっと前に休暇を決めた時はこの日くらいしか休めそうな日がなかったからと休暇にしたけど、数日前から仕事の雲行きが怪しくなっていた。

ここのところ仕事がめちゃくちゃ忙しいし、理不尽なこともあったりで、仕事のために前から決めていた予定までなしにするのは、私の心も壊れてしまうと思って休暇で押し通した。もちろん会議には他の人に出てもらえるよう依頼して、迷惑をかけないように調整した。
だからこのまま休暇でも良かったけど、彼とのデートもなくなったし、私は仕事に行った方が良いのは間違いない。午前半休にして午後から出社することにした。

とりあえず一度誰もいない家に帰り、一心不乱にピアノを弾いていると、彼から「お電話できますか？」と連絡が来た。

電話に出ると、開口一番「かなり怒ってますか」と聞かれた。
怒っても仕方ないし…考えてみたら１年半近く付き合ってきて、彼が体調不良でデートがキャンセルになったのは初めてだった。こんなこともたまにはあるだろう。
だから、「もう怒ってないですよ」と伝えた。

電話で１時間くらい話した。
私の最近の仕事の状況とか悩みとかいろいろ。
私が仕事をつい受けてしまうこと、色んなことに首を突っ込んでしまうこと、それで結局自分が苦しくなってしまうこと。
彼も私も人の仕事まで奪ってしまう"仕事泥棒"だから、自分が悪いんだけど。
「マイさんは悪くないですよ」
と真っ直ぐ言われて、泣きそうになった。
そんなことを言ってくれるのは彼だけ。
上司やまわりからすれば、面倒を頼みやすい、仕事を押し付けやすい便利な人でしかない。

あと、非公表の組織変更の話もこっそり教えてくれた。組織変更で彼の来春までの異動が確実になってしまった。
来春の異動は予想はしていたものの、"確実"となると…。
こうやって、仕事の話も気兼ねなくできて、心の拠り所になってくれる存在がいなくなったら、私はやっていけるかな？

いや、そんなものはもともと無かったのだ。彼が現れて生活にプラスされただけで。マイナスになるわけではない。
「異動してもteamsで話せばいいんじゃないですか？」
「仕事中にですか？？」
彼は遠距離になっても関係を続けたいとそれとなく匂わせてくるけど、私にはそれは難しいかも。
絶対に会えないのに、電話やメールするだけなんて私は耐えられない。もうキッパリ忘れてしまいたい。

昼から出社するとき、晴れて風もなく散歩するにはもってこいの天気だった。本当なら彼とデートだったのになと思うと、そんな過ごしやすい気候も皮肉に感じられた。
今日は一日中、「本当なら今頃…」と、行き場のない感情に支配され続けたけど、もう21時半を過ぎ、デートをしていたとしても彼とお別れの時間。少しは気持ちが落ち着いた。