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綺麗なものだけ見て生きていきたい

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マガジン

  • 怪談まとめ。

    フィクションと受け取ってもらっても、ノンフィクションと受け取って貰ってもいいです。 そういう話なので。

  • 秋原の話をしようか

    友人の秋原(仮称)についての話。あれはなんだったのか、今でも分からない。

  • 怪談小噺備忘録

    もうきっと会うことの無い友人との思い出を忘れないように書いていきます。 大半が怪談ですが。

  • 蝉噪蛙鳴

    書いたやつです。

最近の記事

希死念慮的な

小学生の頃からだろうか。漠然と「寝たら死ぬ」という確信めいたものが頭に染み付いている。 アンデルセンは自分が寝ている間に死んだと勘違いして埋葬されないよう怯えていたと聞いたことがあるけれど、多分それに近いのかもしれない。尤も勘違いしているのは周りではなく私なのだけれど。 ただ、寝たら死ぬのだろうと思って生きているだけ。 希死念慮って言葉を知ったのは随分前になる。言葉を知るまでは何も見えない真っ暗な海底に沈んでいるような感覚を持っていたような気がするのだけれど、感覚に名前がつ

    • 死期

       人は誰しも己の死を理解する時が来る。それは明日かもしれないし昨日であったかもしれない。そんな話。 「山に呼ばれてるから登ろう」  クリスマスも終わり世間は年越しへと様変わりした頃、妙に上機嫌な友人から誘われた。名を仮に秋原とでもしておこうか。 「寒い時に怪我したら痛いやろ、それは触覚が敏感になってるから過剰に痛むからなんや。せやから山に登ろう、冬場なら幽霊の一つや二つ見つけた上で持って帰れるかもしれん」  秋原は言うが早いか私の腕を取り、道をゆく人々の好奇の目など意

      • 壁にもたれ掛かるようにして死んでいたオケラを思い出した。羅生門なんて気取った物言いをしてしまったけれど、多分棺桶なんよね。ここは。悲しいなぁ

        • 有象無象が右往左往

        希死念慮的な

        • 壁にもたれ掛かるようにして死んでいたオケラを思い出した。羅生門なんて気取った物言いをしてしまったけれど、多分棺桶なんよね。ここは。悲しいなぁ

        • 有象無象が右往左往

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        • 怪談まとめ。
          19本
        • 秋原の話をしようか
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          11本
        • 蝉噪蛙鳴
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        記事

          はじめに ランダムに選ばれた三つのお題の要素を織り交ぜた創作怪談をお互いに交換して朗読し合う創作怪談交換会というものを、以前にバーチャル怪談作家・物書きVtuber空亡茶幻さんと行った際に読んでいただいたお話になります。 私が仕込んだお題は以下の三つ。 ・冷凍パスタ ・コスモス ・水 探しながら読んでみてくださいね! 『影』 数年前のことだ。 ふらふらと散歩しながら昼間の商店街を通り抜けるのが好きで、暇さえあれば財布と携帯だけ持って出掛けていた。平日の昼間とも

          赤い指/開閉する鍵

          先日、怪談系幽霊Vtuberのかすみみたまさんに読んで頂いた怪談を記事にしました。 最後に配信アーカイブのリンクを貼り付けていますので、是非聞きに行ってくださいね。 はじめに 不思議な体験や話を耳にすることが多い。それは身近な人が狂ってしまった話であったり、失踪してしまう話であったりするのだが、ほとんどが原因も解決したのかすらも分からない状態のままであったりする。 このなんとも言えない気持ち悪さが好きでずっと聞いていたいのだけれど、たまには私の周りの話もしてみようかと思う

          赤い指/開閉する鍵

          不祝儀敷き

          畳の敷き方には祝儀敷きと不祝儀敷きという二つの種類がある。前者は縁起が良いとされ祝いの席や普段の敷き方に用いられ、後者は縁起が悪いとされ葬式の際にはこの敷き方にされることが多い。 はじめに これは、以前書いた話の続きになります。 幻覚 地獄を見てしまったと言って、秋原が取り乱した日から一ヶ月が経ったある日の事だった。 「蜘蛛が来よる」 秋原から怯えたような声で喫茶店に呼び出された。あの一件以降、視界の端で薄緑色の蜘蛛が動くのだと言う。蜘蛛はいつも同じ姿勢で視界に入

          不祝儀敷き

          梅雨

          もうしばらくすれば梅雨が来る。 私は梅雨が好きだ。独特の張り付くような湿り気と、薄暗い曇り模様が落ち着く。 それに、梅雨時期辺りから蛙の声が聞こえはじめてくるから好きだ。 これは、そんな梅雨時の話。 蛙の目 「蛙の目を覗いたら、たまに自分以外の人の顔が映るらしいで」 友人の川崎からそんな突拍子も無い話をされたのが始まりだった。 川崎とはよく連れ立って心霊スポットを巡ったり、頻繁に喫茶店で怪談をし合って暇を潰していた。この日もいつものように喫茶店で談笑していた。 「そ

          猫の家

          はじめに近所にあった幽霊屋敷や心霊神社、いつも胃液を吐いている犬の住む家。幼い頃の私にとってそれらは非日常を感じさせてくれる憩いの場所であった。 思い返してみればなんてことは無い普通の場所なのだが、そんな中にもひとつふたつ未だに理解しきることが出来ない場所がある。これはそんな場所の話だ。 猫の家小学生の頃ヨシくん(仮名)という友達と二人で遊ぶことが多かった。大半はヨシくんの家でゲームをしたり路地裏を探検したりといった他愛もない遊びだったが、時折少し遠くまで自転車を走らせるこ

          猫の家

          事故物件

          オカルト的な話にはなりますが、事故物件には地縛霊が出るだとか異音が響くだとか、そういった話が絶えません。ホラーやオカルトが苦手な方はそのような現象に会いたくないという一心で、事故物件だけは避けて部屋を借りようとすることでしょう。怪現象には絶対に出くわしたくない、と。 ですが、怪現象という物は本当にその部屋でだけ起こるのでしょうか。事故物件の隣近所では怪現象が起こり得ないなんて、どうして言い切ることが出来ましょうか。 なんてね、冗談ですよ。 異音友人から聞いた話だ。 女

          事故物件

          神様に嫌われた人

          御神木が揺れる神様に嫌われた人が鳥居をくぐると御神木が揺れる、という話がある。 誰が言い始めたか私には分からないが、大方風が酷い日に参拝した人が帰り道に怪我をして悪態をついたのが始まりなのだろう。参拝した日に怪我をするなんて私は神様に嫌われているに違いない、嫌われているから御神木も揺れていたのだ、と。 面白い話ではあるのだが個人的に信じることが出来ない。神様なんて居ないからという訳では無く、理由は別にある。 以前交流のあった友人に木村という奴が居た。この木村という人間が

          神様に嫌われた人

          地獄を見た、という話

          地獄と聞いて何を思い浮かべるだろうか。沸騰する血の中で煮詰められる罪人を想像する人も居れば、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」を連想する人も居るだろう。願わくば、そのまま地獄を思い描いて読んで欲しい。 これは秋原の人が変わってしまう前の話。 目玉 「目を見た」 久しぶりに顔を合わせた秋原は神妙な面持ちで言った。 鏡で自分の目をまじまじと見たのだろうか。確かに自分の目を見つめると薄ら寒いものが背筋を駆け上がる感覚に襲われるが、それにしては様子がおかしい。 「俺よりもでかい目玉がな

          地獄を見た、という話

          泡銭

          「金持ちになったわ」 そう楽しそうな声で呼び出され指定された店に向かうと、既に赤ら顔になった秋原が居た。聞くと、以前金を貸した滝川という人間が色をつけて返してきたのだと言う。破裂しそうなほど膨れ上がった財布を見せびらかしながら語った彼は、そのまま床に倒れ込むように眠り始めた。こうなっては仕方がないので、わたしは彼の財布から支払いを済ませ、彼の部屋まで連れ帰ることにした。 道中少し意識が戻った秋原は、呂律の回らない様子で事の詳細を教えてくれた。 確かに秋原は金を貸していたが

          幻覚

          旅先で聞いた話になる。 地名は伏せるが、関西の温泉地での事だ。 温泉卵を作ろうと籠を吊るしていた時、不意に声を掛けられた。見ると声の主は六十代前後の男性で、わたしの籠をじっと見ていた。若い人間が一人で居るのが珍しいから声をかけたのだと言う。聞くと男性も一人であったため、少し話し相手になることにした。 しばらく他愛もない話をして居たが、わたしが怪談を集めることを趣味にしていると知ると、少しの間の後こう言った。 「温泉卵好きなんか」 「好きですよ。それに腰痛に良いらしいから食べ

          おまじない 其の二

          麻袋に米を一合入れて綺麗に折り畳んだものを玄関先に置き、それに向かって好きな人の名前を三度呼びかける。そうすると、近いうちに呼んだ人物が訪ねてくるという。これは幼い頃に聞いた「たんたん」という恋のおまじないだ。これだけ聞けば可愛らしいものであるが、米以外のものを入れた途端き呪いの方法へ変わってしまう。野菜を入れれば病気になり、肉を入れれば怪我をするそうな。 幼い頃は恐怖を感じていたものだったが、今となってはよくある話のひとつに過ぎず、なんの感情も湧いてこない。 そういうわけで

          おまじない 其の二

          蠱毒

          「蠱毒(コドク)」というものを知っているだろうか。大きな器を用意し、五月五日にその器へ大量の生物を入れて共喰いさせる。そうして最後に残った一種の生物を用いて術を行う。有名なものは蛇を用いた「蛇蠱」だろうか。気になった方は是非調べてみて欲しい。 この蠱毒だが古代には禁止されており、実際に流刑になったこともあるそうだ。現代ではもちろんそんなことは無いが、興味本位で実行するのはおすすめしない。あやしい術だからでは無い。わたしが実際に行ったからこそ、止めるのだ。 今から七年程前にな