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所属アニメーターはフリーランスか?

アニメ版『ジョジョ』の総作画監督が語るアニメーター業界の「過酷な実態」って記事を読んだ。そこに「スタジオに「所属」していても待遇はフリーランス」ってあった。いや、所属フリーランスは悪いものじゃない。

アニメーターはスタジオや制作会社の“所属”ということになっていて、スタジオに用意された机に座っていれば仕事が回ってくるんだけど、実際の待遇としては社員でも何でもないフリーランスだと。それなのに本人はスタジオの社員だと思っている(以下略)

高卒で初めてスタジオに入れてもらったときは、アニメ業界のこと知らなかったから、社員だと思ってました。タイムカードあったし、基本給出てたし。健康保険や年金はなかったけど。そこは業界の老舗スタジオだったけど、オレが入って1年もたたないうちに解散になって。その時初めて社員は事務だけと知りました。

その後、この記事のアニメーターと同じスタジオに1980〜1990年まで所属してました。元演出家が社長のスタジオです。オレも含めてみんな社員は事務だけって認識してましたね。でも完全にフリーランスでもないのです。所属タレント扱い。面倒なことは会社が代行してくれたり、社長が外敵から守ってくれたりします。

年末調整してくれるし、年1回の旅行あったし、交通事故にあったときや、泥棒に入られたときも補助してもらえました。ヒマなときはどこか旅行でも行けって旅費くれたこともありました。原画アップに間に合いそうもないときはカバーしてもらえます。制作に問題のある作品は突っ返してくれます。現金が必要な時はバンス(未完了仕事のギャラ請求やギャラの前借り)できるし、会社が潤った時は数万だけど寸志がもらえました。そして原則他社の仕事、いわゆる営業は禁止です。こんな感じなのでフリーランス待遇じゃないのです。今は個人フリーランスなので、よくわかりますが、所属することで助け合うという環境が重んじられました。なので中にいるアニメーターにフリーランスという言葉は使いません。でもフリーランスになることはできます。それはスタジオを辞めて独立することを意味し、「フリーになる」と言います。アニメ業界でのフリーランスは、スタジオに属さず個人で活動することでした。

昔はスタジオ所属のフリーランスもいましたよ。フリーが集まって仕事してるスタジオなので会社じゃないです。個人でとってきた仕事や自分に入ってきた仕事をこなすのでフリーって自覚があります。フリーが集まれば助け合うこともできるし、家賃や光熱費もみんなで払えば割安です。でも誰かが代表(取り仕切る役)も兼任しないと回らないし、そーゆーフリー集団のスタジオは長続きしないですよね。今はそーゆーとこないのかな?今ならシェアオフィスみたいに、シェアスタジオなんかアリかもしれません。

あとですね、スタジオによっては社員にしてくれる会社もありますけど、社員アニメーターの給料もらうよりは、出来高でギャラもらった方が稼げる人は、社員の話がきてもお断りですよ。拘束もされない、ノルマもない、所属アニメーターの方が社員よりオイシイです。

スタジオの先輩からは「社員なんだから、会社がグロスで受けた仕事をやらないのなら出ていけ」みたいなことを言われるわけですよ。

この先輩が誰か知らないけど、社員ってのは雇用契約を結んだ会社員ではなく、会社の所属タレントの意味で言ったんじゃないかなと。だから、会社がグロス請けした仕事は最優先でやらないとね。そのために席確保されてるわけで。どうしてもやりたくなければ、断るって交渉もできるんです。

そういえば外のスタジオで仕事してて呼び戻されたことが3度あります。電話1本で帰ってこいと。会社の意向だから仕方ない。海外武者修行の佐山や三沢みたいw そう、昭和のプロレスラーもアニメーターとおんなじでした。

「確定申告をしたことがない」という話が出てきますけど、それを問題だとは思っていないことが、アニメ業界のいちばんの問題だと思います。

年末調整をスタジオがやってくれるところもあるんですけど、(以下略)

年末調整をスタジオがやってくれるなら確定申告したことないのも不思議じゃないですよね。年末調整してもらってる時点でフリーランスじゃないわけだし。オレは師匠の勧めもあって、確定申告は自分でしてました。白色だけど。当時の練馬税務署では「アニメーター」は通らないので「画家」でしたが。

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