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どこにでもある恋の話

好きな男性がいる。

唐突な発言だけれど、恋愛として好きな人。 https://note.mu/aeeee__b/n/n121e714cd276 で書いたが愛の定義と言うのは未だよく分からない。ただ2年振りくらいに恋をしてる、と実感した。

彼は私にはないものを持っている。とんでもないくらいにポジティブで本人曰く悩んだ事がほぼないと言う。一般的に努力ととらわれる様な事を努力と認識していない。友人と旅行に出掛けてマリンスポーツで遊び、音楽は全然聴かなくて文学なんてもっての他。まるで対称的な彼に私はどうしようもなく惹かれている。

出会った時の印象から住む世界が違う気がしたが、彼の見ている世界はどうにも輝かしく楽しそうに見えた事をよく覚えている。仕事も人間関係も無意識にうまく出来る人で、運良く出会わなければ話す事はなかっただろう。そんな彼と近付くキッカケは、酔った彼が私にキスをしてきた事だった。

彼とは何度か会い、ドライブへ行った。恥じらいなく突き抜けるほどふざけた事が出来て、私が真面目な話や悩みを話せば全て笑いに変えた。彼と過ごす時間の中で、肩の力を抜いていいのだと知った。自分自身を取り繕う必要はないのだと知った。そして、笑い方を知った。目が合えば彼は笑う。そっと抱き締めてくれる腕の厚みが好きで、いつも吸ってるタバコの香りが忘れられない。彼といる時間が好きで、彼が愛おしくてたまらなくなった。ずっと隣にいて欲しいと願った。


彼には恋人がいる。


数年付き合っていて同棲しているらしい。家に帰ればどちらかが食事を作り、同じベッドで寝るらしい。姿も性格も知らない女性。恋人といる時の彼も分からない。どんな時間を過ごして来たのだろう。不思議と恋人に対して憎しみはなかった。彼が選んだ人だから、きっと魅力的な女性なのだと思う。目を瞑れば自身の痛みは隠せる。目の前にいる彼の笑顔だけ見れば忘れられる。彼と彼の恋人の幸せを願った。彼と恋人の間の不幸を願いながら。

2ヶ月ほどそんな関係を続けたある日、突然連絡が減った。返信すればすぐに返ってきたLINEが1日に1通返ってくるか来ないかくらいになった。遊びの誘いをしても理由をつけて断られた。その時、私は彼に依存していたと思う。彼に私に対しての気持ちを聞いたり、今後どうするのか問い詰めた事もあった。彼の心境にどのような変化があったかは不明だが、信じたくない予感が脳裏をよぎる。

ある時に1日だけ、会う予定が決まった。昼間はドライブをし鍾乳洞へ行く。変わらぬ姿の彼にホッとする。自身の予感が当たらない事を祈りながら陽が落ちていくのを眺めた。夜になり名古屋へ帰ってきて、飲み屋へ行く。いつもの様に馬鹿話をし、笑っていた。iPhoneの時刻を眺め終電が近い事を知る。彼は恋人が待つ家へ帰るのだろうか。笑顔の裏で時が止まればいいと願う。そんな折に彼はポツリと話した。「もうやめよう」

恋人と私を天秤にかけたのだと言う。どちらも大切だけれど共にした時間が長く救われた事もあり、今私を選ぶ事は出来ない。その言葉にどこかホッとしている私がいた。痛みから目を背けず、誰かの不幸を願わなくていい。地下鉄でいつものように手を振り、二度と連絡は来なかった。

それから3ヶ月くらい経った。相変わらず忘れられない私はどこかで彼に連絡するかも知れないと、LINEから連絡先を消させずにいる。何度も彼の何が欲しかったのか考えた。彼自身が欲しかたのか、彼の持っているものが欲しかったのか、ただただ愛が欲しかったのか。脳裏から彼が離れてくれなかった。街で彼のタバコの香りがする度に彼を強く連想した。諦める事を諦めようと思った。


話は https://note.mu/aeeee__b/n/n71c7007fc519 の記事に戻るが私は週末に踊り尽くした。様々な感情が沸き起こり、自分と言う存在を何度も見つめ直した。ただただ楽しかった時の中で、私は気付くのだった。記憶から離れなかった彼の存在を忘れている自分に。

恋愛というのはどんなに深く愛した相手でも忘れてしまえば、焦がれた時も愛した理由もぼやけていく。それは諦めるとは異なり、諦めたいと願った事さえも忘れる事だ。もちろん良さや好きになった理由は覚えてるだろう。ただそれは記憶から消すのではない。共に過ごした時間が現在進行形ではなく過去形のものに変わり、思い出と言う言葉になるものだ。彼を忘れ、笑う事が出来た現在の私には彼は必要ない。

彼をLINEの連絡先から消した。

私は彼が好きだった。

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