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基礎的な知識がないと議論を通じた学習はできないのか

冒険家の皆さん、今日もラクダに揺られて灼熱の砂漠を横断していますか?

今日はまたオート三輪の中で喋ろうと思っていたんですが、実はこれが全然捕まらなくて、それで近くにスターバックスがあったので、そこに入ってここで時間つぶしをしているところです。少し時間を潰しているとオート三輪がつかまえられるんじゃないかなと思っています。

今日は昨日参加したゲーミフィケーションのセミナーで考えたことを紹介したいと思います。

まずこのセミナーはゲーミフィケーションの実際にゲームをたくさん作ってらっしゃる米光一成さんっていう、例えば「はぁって言うゲーム」とか、最近はそれが多分一番有名だと思うんですけど、昔も「ぷよぷよ」とか、そういうゲームを作っていらしたゲームデザイナーの方です。このセミナーの内容自体はゲーミフィケーションの話があんまりなくて、ちょっとそこは正直言うとがっかりしたところがあるんですが、でもセミナーのやり方はとっても面白いんですよ。100人以上いるところに「最近読んだコンテンツで一番面白かったの書いて下さい」とか言って、もう本当に100人ぐらいの人がダーッと書くんです。もちろん僕も書きましたし。それから自己紹介する時に「6分計ってください」とか言われて、いきなり僕が指名されて、多分名前が分かりやすかったからかもしれません。「みどごんパパ」と書いてあったから分かりやすかったからか知らないんですが、「みどごんパパさん6分計ってください」と言われて、それで自分の自己紹介を始めるわけです。僕が「6分経ちましたよ」とお知らせすると、そこからまだ全然終わってないので、超特急でやるんですけど、後でご本人が話されていたことによると、そういうのも実は全部計算済みのことで、講師が「間違ってもいいんだ」っていうことを身をもって示すことによって、その場の緊張が解けて、「自分も間違ってもいいんだ」っていう感じでその場が活発になるというようなお話を後でされていました。

本題に入る前にもう一つ言いたかったのは、ゲーミフィケーションの話なので全然日本語教育と関係ない分野なのに、なんかハナキンの人がすごいいっぱいいて、かつ、トラブルがあった時にやっぱりハナキンの人たちが色々助けたりして、ハナキンの人って、もしかしたらすごい人たちなんじゃないかってと改めて思ってしまいました。ハナキンに毎週出ていると、「え、そこでトラブル起きるの?」みたいなそういうトラブルが起きちゃったりもするんですが(たとえばブレイクアウトにランダムにグループ分けできないとか)、ハナキンの皆さんも是非そういう時に限らず、その場の皆さんをサポートするような人達であってほしいなと思っています。

で、本題に入るんですが、最後の質問のところで、社会科の先生が例えば第1次世界大戦について中学生か高校生と言ってたか覚えてないんですが、その生徒たちにディスカッションしてもらおうと思ったんだけど、全然ディスカッションができない、ディスカッションにならないということ質問あったんです。それに対して講師の米光さんが「ディスカッションするには基礎的な知識がないとできないので、それは無理だろう」というような話をコメントをされたんです。

これがちょっと、実は僕はそう思ってなくて、というか日本語教育の世界ではあまりそう思われてないような気がするんですよね 。日本語教育といおうか語学教育の世界ですね。僕がその時に思い出したのは岡田順子さんという語彙習得の研究者の方です。彼女は英語教育の世界の人なんですが、彼女が提案されていた「岡田式繰り返しシート」とかいうものです。これは何かと言うと、たとえば英単語を一つ先生がテーマとして与えるわけです。その英単語を二人でペアになって話し合いながら10回書くんです。それはそのどうやって10回書くかと言うと、それが
いいもの・良くないもの
大きいもの・大きくないもの
丸いもの・丸くないもの
触(さわ)れるもの・触れないもの
目に見えるもの・目に見えないもの
温かいもの・暖かくないもの
みたいになっているんですね。そういうペアのどちらにその単語が入るかをディスカッションをして、ちゃんと意見を合わせてから、そのどちらかに書くというやり方なんです。

例えばりんごのAppleなら、それが良いものか悪いものかと言ったら「体にいいから、栄養もあるからいい」って言う人もいるだろうし、「聖書で蛇が食べさせたし、白雪姫で出てくるように毒が入ってたりするから悪いもの」という人もいるかもしれません。これは別にどっちでもいいんです。どちらが正解とか間違っているというわけではないんです。ただ、大事なのは二人で話し合ってその意見を一致させてから書かなきゃいけないってことなんです。そこで「深い処理仮説」と言われてますけど、それが起きてそこで記憶に定着するというやり方です。

今日出てきた第1次世界大戦なども、例えば昔だったら、確かに第1次世界大戦について何も知らない人が、「それはいいものか良くないものだったのか」とか、「大きいものだったのか大きくないものだったのか」とか言われても全然確かにディスカッションができなかったと思うんですけど、今はやっぱり Google がありますよね。学校もGIGAスクールでこういうのが使える環境も整っています。それを考えると、決して「本人の基礎的な知識がないからそういうディスカッションによる学習ができない」とは僕は思わないんです。例えば第1次世界大戦に対しても、「人が死んだから悪いものだ」っていう人もいるし「あれは古臭い帝国とか絶対王政みたいなのがそれで崩壊したから、そういう意味ではいいものだ」って言ってる人もいます。そういうのも Google で検索すればすぐに出てくると思います。今日ご紹介した岡田順子さんの10回書く「岡田式繰り返し」は語彙習得のためのものですから、直接こういう社会の第一次大戦について勉強する時に役に立つかというと、まあ改善の余地はあると思いますが、ただ、こういうアイデアとしては、そういうものを使って Google でいろいろ検索しながら、それは良いものだったのか悪いものだったかを二人で話し合いながら書いていくとか、そういうことをやれば、決して議論を通した学習は無理ではないと僕は思っています。

岡田順子さんの「岡田式繰り返しシート」はご自身のブログで公開されていたのですが、現在は閉鎖されてしまっています。もしかしたらこの書籍にまとめられているのかもしれませんが、電子版が出ていないので、中身はまだ確認できていません。

岡田順子『少しの工夫で効果4倍!魔法の英語語彙指導アイデア』
https://amzn.to/3loCiy2

最後に、もう広報が出ていますが、来年2月の27日日本語学校教育研究大会で僕がプレミアムトークか基調講演というのかよく分からないですが、冒険家メソッドについて話をすることになっております。特に今回はコロナのオミクロン株が出てきて、それで実際皆さんが留学するのが非常に大変になってますよね。そういうところで、まさにこういう冒険家メソッドのようなものが必要になってくると思っています。来れないから日本と接点が亡くなるんじゃなくて、来れないんだったらソーシャルメディアを使ってどんどん日本と接点を作ってもらうという方向で皆さんも考えていただけたらと思っています。

そして冒険は続く。

【参考資料】

少しの工夫で効果4倍!魔法の英語語彙指導アイデア (授業をグーンと楽しくする英語教材シリーズ12) 単行本 – 2010/1/1
岡田 順子 (著)
https://amzn.to/3loCiy2

村上吉文「語彙の教え方、学び方」
https://www.slideshare.net/midogonpapa/ss-3383232

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