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オンラインでは学生の理解度が分からない?

冒険家の皆さん、今日もラクダに揺られて灼熱の砂漠を横断していますか?

さて、オンラインの授業が長引くにつれ、標記のような相談をよく受けるようになりました。 要するに、オンラインではカメラをつけてくれない学習者もいるし、カメラをつけてくれていても画面が小さくて表情がよくわからず、理解度に合わせた授業の進行ができないというのです。

解決方法をご紹介する前に、まずこのような問題を感じていらっしゃる方には大きな誤解があります。何十人もいる集団で同じ内容を同じスピードで勉強する限り、一般的な教室では、学習者の1/3程度は教師が黙っていても教科書を読むだけで勉強すべきことが理解できますし、学習者の1/3程度はスピードを落としても、一度聞くだけでは理解できないでしょう。 ですので、情報伝達を行う場合は、あらかじめ録画にしてしまって、再生スピードや再生回数は全て学習者にコントロールしてもらう必要があります。前にも書きましたがライブで講義をしてはいけません。

むらログ: Zoomで講義をしてはいけません http://mongolia.seesaa.net/article/474591708.html

しかしコースではない単発のセミナーなどで、参加者の理解度を確かめながら話を進めたい時もあるでしょう。あるいはコースであっても学習内容によってはそうしたことが必要な場合もあるのかもしれません。

その場合は、画面に映った学習者の表情から理解度を把握しようとするのはかなり無理があります。教室で行うアナログな事業の場合は表情から理解度を読み取ろうとする以外に方法はないかもしれませんが、オンラインの場合は様々な方法でデータを得ることができます。

僕がよく使うのは、Mentimeter というサービスです。オンラインで質問をすると、参加者はインターネットを使って回答することができ、その結果が棒グラフなどになってスクリーンに表示されます。ただし、僕が使っている無料バージョンではひとつのプレゼンで三つしか質問を作ることができません。(コロナで状況は変わっているかもしれませんが未確認です)

似たサービスとしては sli.do というのもありますが、以前に #Slidoの冒険 という体験会をやってみた時は、同じ質問に対する回答の数がデスクトップとモバイルで違っていたりして、僕は今のところ信頼性が低いと認識しています。

同じように教師が理解度を確認しながら授業を進めるツールとして、socrative というのもあります。 Kahoot! などから音楽を抜いてちょっと地味にしたようなサービスです。これもリアルタイムで学習者の回答などを見ることができますので、表情などから理解度を把握するよりはずっと現代的でしょう。ただしこれは、独立したアプリなので慣れるまでにはちょっと時間がかかるかもしれません。

今日はそれとは別に、質問がひとつしかない Google フォームをカジュアルにたくさん使うという方法をご紹介したいと思います。

僕が最初にこの方法をやってみたのは、今年の1月11日に行われた、以下のイベントです。

2019年度第2回研究例会 – 日本語プロフィシェンシー研究学会
http://proficiency.jp/?p=2249

僕はカナダからオンラインで基調講演者としてそのイベントに呼んでいただいたのですが、やはり基調講演という性質上、どうしても一方的に話すことになってしまいます。しかも、参加者の皆さんは一つの会場に集まっていて、オンラインの授業と違って、一人一人の顔を見ることはほぼ無理です。そのために、単発のグーグルフォームを4回使って皆さんの意見を伺いながら話を進めました。

参加者の皆さんの回答は、 Google フォームの 「responses」の中の「Summary」でグラフ化されたものを見ることができます。インターフェースが日本語の場合は「回答」の中の「概要」という部分だと思います。質問によって、自動的に円グラフになったり、棒グラフになったりして、とても見やすいです。これらのグラフはその質問の作成者しか見ることができませんが、オンライン授業の場合は教師が画面共有をすればもちろん学習者の皆さんにも見せることができます。

これはやはり研究者の皆さんの集まるイベントの基調講演なのでこちらも気合を入れまそたが、毎日の授業でそこまで時間をかけて準備することができないという方もいらっしゃるでしょう。それでいいと思います。僕もそうですから。

そういう皆さんのために、僕があらかじめテンプレートを作っておきました。どれも質問はひとつしかありません。質問文はどれも「ライブでの質問に答えてください。」です。 テンプレートは以下の4種類です。

Y/N質問フォーム
「はい」か「いいえ」だけで答える質問です。回答は円グラフになります。
https://docs.google.com/forms/d/1XiWGEl6GYiJZveTaGTl3A1GIODhZPtUgJi9d_f1lLd0/copy

四択質問フォーム
A,B,C,Dの四つから一つだけ選ぶ質問です。 回答は円グラフになります。
https://docs.google.com/forms/d/1PHlNKvUBkufv_JlcLmUAoydy6hsnQeuY8OUxS6u9kbA/copy

四択複数回答質問フォーム
A,B,C,Dから複数回答できる質問です。回答は棒グラフになります。
https://docs.google.com/forms/d/1murCU2nepz1DkczGH9Y7PT8HiCXvcQfY2BX8HltGGp0/copy

5段階質問フォーム
「とても賛成」から「まったく賛成できない」まで5段階で回答するフォームです。
https://docs.google.com/forms/d/1kwyZgR3qCCiVmkR6RD8DcSFZWjX1xWram_X-Rrzi62c/copy

それでは実際の使い方を以下に紹介しましょう。

まずこのブログの URL か、あるいは上のフォームの四つの URL をすぐに取り出せるところに保存してください。ブラウザにブックマークするのがいいと思います。 Chrome の場合は URL の右側にある星のマークをクリックするとブックマークすることができます。

では次は授業準備の間に何をするかです。
まず、理解度を把握するための質問を考えます。これはもちろん授業の内容によって違いますが、ここでは最初の「Y/N質問フォーム」を使って、「日本の首都は東京ですか」とか「水の化学記号は H2O ですか」などとしておきましょう。この質問に答えてもらうための質問フォームを作るには、上のリンクを開いて、「Make a copy」というボタンを押すだけです。2秒でできます。簡単ですよね。 これを授業中に使うためには、右上の「Send」(送信)をクリックします。 次の画面で、メールのアイコンの横にあるクリップのようなアイコンをクリックすると学習者に共有するためのリンクが表示されますから、そこで「Copy」をクリックします。これで自動的にクリップボードにリンクがコピーされていますから、それを教案なりスライドなりにペーストすればいいのです。普段からパソコンを使っている人なら20秒ぐらいですべての作業が終わると思います。

あらかじめ教案を作り込んでおきたい人でしたら、学習者に見せるためのスライドに質問を書いておいて、そこにこの質問フォームへのリンクも貼っておくと良いでしょう。

もっと臨機応変にやりたい人でしたら、これらの質問を10個ぐらい作っておいて、確認したいと思った時にその都度使えばいいと思います。このフォームの中には質問が「ライブでの質問に答えてください。」しか書いていませんから、口頭で質問をして、このフォームを使って回答してもらうと良いでしょう。

「オンライン授業では学生の表情が見えないから使えない」というのを始め、アナログな授業のコピーをするだけではオンラインではできないことが多すぎます。しかしその逆に、このようなデータを直接頻繁に授業中に何度も学習者から得てグラフ化するようなことはアナログな授業ではできません。ですから僕はむしろオンライン授業の方が学生の理解度を把握することは簡単だと思っています。

「学習者の理解度」というのは一つの情報です。そして、情報を扱うには情報技術を使う方が迅速で効率的です。移動するときには乗り物に乗り、料理するときには調理器具を使うように、情報を得るときには情報技術を使いましょう。

そして冒険は続く。

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【参考資料】
Interactive presentation software - Mentimeter
https://www.mentimeter.com/

Home - Socrative
https://socrative.com/

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