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スライドの参考文献は最後にまとめない

冒険家の皆さん、今日もラクダに揺られて灼熱の砂漠を横断していますか?

ご存じの方も多いかとは思いますが、おととい京都日本語学校にご招待いただいて講演会を行いました。ここでは380人の方にお申し込みいただき僕の今までの講演会の中ではおそらく一番たくさんのオーディエンスを集めていただいたのではないかと思います。話の内容についてはビデオも11月3日までですが公開していますし、文字起こししたものも出版されるということですのでここでは申し上げませんが、皆さんの反応の中で一つ気が付いたことがあります。それは僕がスライドからリンクをたくさん貼っていたことについて「ありがたい」「便利」と評価する声が多かったということです。

これは学会の発表などで僕がいつも不満に思うことなのですが、よくスライドの中に「山田(2020)」などと書いてあることがありますよね。これは多分論文で書いている時のスタイルをそのままスライドに応用していると思うのですが、論文とスライドは違うのでこのようなプレゼンはしてほしくありません。

論文では最後にまとめて参考文献を挙げていますよね。これは論文を読む時間と、参考文献を確認する時間が分かれていた時の名残だと思います。つまり印刷された論文を読むのは教室だったり、研究室だったり、図書館の椅子だったりしますよね、その一方で参考文献を探すのは図書館のインデックスカードとかOPACなどの端末の前だったりしました。つまり、論文の本文を読むのと、その参考文献を探すのは時間も場所も違うところだったので、別々のほうが良かったのです。また、印刷物の場合は本文の途中を読んでいても、論文の最後にまとめている参考文献をすぐその場で見ることもできます。そのため本文と参考文献を分けて書くのは極めて合理的な習慣だったと言えます。

しかし、発表は違いますよね。スライドの中に「田中(2020)」などと書いてあっても、その田中さんが田中花子さんなのか、田中一郎さんなのか分かりませんし、第一、その論文のタイトルすら分かりません。もしそのスライドがGoogleスライドで、僕がいつもやっているようにそのスライドのURLがどのページのフッターにも記載されてあれば、自分も手元のスマホでそのスライドを表示して、一番最後のスライドの参考文献一覧を確認することもできます。しかし、ほとんどのプレゼンテーションではそのような親切な作りになっていないので、結局その田中さんが誰なのか、そしてその論文のタイトルが何なのかも分からないまま最後に発表者が参考資料の一覧を表示させるまで我慢しなければなりません。

僕はそういうのが、自分自身で嫌だし、おまけに最後に参考文献のスライドを作るのも面倒くさいので発表の途中で参考文献に触れる時にはほとんど必ずその途中のスライドからリンクを貼って、その参考文献を開くことができるようにしています。

第一にはもちろん、僕がスライドを作る時に楽だからというのもありますが、もちろんそれを見ている人にとってもクリック一つで参考文献を開くことができるというのは便利に決まっています。そして何よりも、簡単に参考文献を開くことができるということは、僕の言っていることが簡単に検証できるということであり、それはすなわち僕がいい加減なことを言っている訳ではなく、それなりの根拠に基づいているということを示すことができます。仮に僕の発表を見ている人が、そのリンクを開かなかったとしても、僕のプレゼンの中の特定の文字がリンクを貼っている色になっているだけで、信憑性はいくぶん増すのではないかと思います。

ということで、皆さんも論文を書く時なら最後にまとめてくださっても構いませんが、何らかの発表の途中で検証可能な根拠に触れる時は、最後にまとめて参考文献リストを作るのではなく、そのトピックについて話している、そのスライドから直接リンクを貼っていただければと思います。

そして冒険は続く。

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