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二番目に下手な人にしかできないこと

冒険家の皆さん、今日もラクダに揺られて灼熱の砂漠を横断していますか?

日本語学校の教室でも職場でもスポーツのサークルでもいいんですが、一番下手な人のケアをするのって誰の役割だと思いますか? 僕はこれまでそれはリーダーの役割だろうと思っていたのですが、実は違うんじゃないかと最近思い始めました。

定期的に参加している、ある国際的なメンバーのいるグループにいた時の事ですが、僕はしばらくそのグループで英語が一番下手な人間でした。しかしある時僕より英語が苦手らしい人がやってきました。それで我ながら驚いてしまったのですが、僕自身がものすごく積極的に発言するようになったのです。それまでは分からないこともなんとなく分からないままで済ませていたのですが、「今のDMというのはDeputy Ministerの意味ですよね」などと、僕より英語のできない人には分からないだろうなと思うところを一つ一つ確認するようになったのです。

その理由をうまく言語化できないのですが、僕一人が分からない時はそれは僕個人の問題であって、みんなの問題ではないと認識していたように思います。しかし、僕より英語のできない人が入ってきたことにより、その人が議論についていけないことがそのグループ全体の問題として認識できるようになったのかもしれません。かつ、僕とその新しい人以外のメンバーはほぼ英語のネイティブ並みだったので、どんな表現が難しいのかが分かっていないように見えて、それが分かる自分にしかできない役割があると思ったのも理由の一つかもしれません。

それからこれはちょっと自分自身でも嫌な感じがするのですが、僕より下手な人が入ってきたことによって少し自信がついたということもあるのかもしれません。というよりも、僕自身がそのグループに最初に入った時のことを思い出して、その時よりはだいぶ英語(そのグループで多用される専門用語など)も分かってきたんじゃないかということがその新しい人を見て実感できたのかもしれません。

ところで、これは何も英語に関したことではないと思うんですよね。日本で暮らしている日本語を第一言語としない人たちのグループでも、もちろんこういうことはあると思います。日本語の教室などはまさに典型的なパターンですよね。

さらに言えば言語に限定される話でもなく、最近で言えば教育現場の ICT の利用などに関する分野でもこのようなことは言えるのではないかと思います。Zoomのリンクが分からないとかそういうことも全て、一番苦手な人は言い出せないで困っていると思うので2番目の人が気がついた時にどんどん質問していけばいいのではないかと思います。

つまり、二番目に下手な人には一番下手な人やグループ全体に対して責任があるということです。一番下手な人の気持ちが分かるのはそれまで一番下手だったあなた自身しかいません。そしてあなたはもう一番下手ではないので劣等感に悩む必要もありません。一番下手な人は劣等感などでどうしても分からないことを「分からない」と言い出す勇気がないことが多いでしょう。しかしあなたは違うのです。一番下手な人が分からないことはあなたが代弁して「分からない」という義務があるのです。それはあなた自身のためではなくそのグループ全体のためです。

それでグループの議論が止まってしまうのが嫌でしたら、初めから上手な人だけで話を進めればいいのです。上手ではない人もその議論に参加しているのでしたら、その議論の主催者には参加者全体に議論に加わってもらう責任があります。ですから分からないことを「わからない」ということに何の遠慮もないのです。しかし、一番下手な人にはそんなことを言い出す勇気はないし、そういうリーダーには一番下手な人は何が分かっていないかを把握する能力はないでしょう。その橋渡しをできるのが2番目な人の立場なのだと僕は思います。

もちろん一番下手な人が率直に「わからない」と自分の言葉で言えることが一番望ましいでしょう。しかしそれがその場の雰囲気で言い出しにくい場合は、自分だけの問題ではなくそのグループ全体の問題だと認識できる2番目に下手な人の義務なのではないかと思います。

こういうことはもちろんそのグループのリーダーが言ってはいけませんが、僕自身が2番目に下手な立場に立ってみて感じたことを文章にしてみました。皆さんがリーダーの時ではなく、そのグループで2番目な下手な立場にいる時に思い出してみていただければ幸いです。

そして冒険は続く。

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