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学力差のあるクラスでインプット中心の授業

冒険家の皆さん、今日もラクダに揺られて灼熱の砂漠を横断していますか?

さて、 なぜか分かりませんが、この一か月ほどブログを書くモチベーションが非常に低下していました。そしてなぜか分かりませんが、今日また急に書きたいと思うようになってきました。それでお久しぶりですが、もうかなり前に見た佐久間さんの記事(参考資料の欄参照)から考えたことを書いてみたいと思います。

細部で間違っていたら申し訳ないのですが、ここで書かれていたことはレベル差のある教室でアウトプット中心の授業にすると、それほどレベル差の弊害が出ないということだったと思います。

読んでみると、僕自身、実際にその通りだと思いました。

それで思い出したのは、実は全く反対のアプローチをとっていたことがあるということです。これは僕が協力隊としてモンゴルの小中学校に派遣されていた頃の話なのでもう30年近く前のことなのですが、そこでは「日本語初歩」を使ったメインの授業の他に、日本語サークルとして日本のテレビドラマなどを使った授業をしていました。

そしてその理由が、まさにレベル差のある学習者に対して有効だと思ったからなんです。

映画を見る時は一つ一つの台詞を理解できないと困るというような人が日本には多いですが、実は日本語の字幕も元のセリフの1/3ぐらいに省略されていますし、細部がわからなくてもそのコンテンツを楽しむことは十分にできるんですよね。

本当に大事なセリフ(文型ではなくストーリー上大事なセリフ)をいくつか説明するだけで、そのコンテンツを楽しむということは十分に成り立ちます。そしてその上で、挨拶しか知らない人は挨拶だけわかったという手応えがあるし、もっとレベルの高い学習者はもちろんその能力に合った表現もたくさんインプットできます。

この日本語サークルでは「東京ラブストーリー」とか「あすなろ白書」とか「夏子の酒」とか基本的に45分程度のドラマを1学期かけて最初から最後まで視聴するということをやっていました。 そして2,3分のシーンを選んで僕が文字起こしをしてそれをプリントにして配っていました。そこだけは読解で言えば精読のような感じで詳しく勉強し、何度も同じシーンを見せたりしていましたが、後は基本的に一回流してみるだけです。

実際にこの日本語サークルは非常に人気があり、日本語の教室の席が足りないようなこともよくありました。そういえば日本語を勉強していない子供たちもたくさん来ていたりしましたっけ。こうした状況自体が細部を理解できなくても問題がないということを実証していると言えるでしょう。

この体験と佐久間さんのブログの記事を両方考えてみると、レベルがバラバラのクラスで授業をする時には、文型積み上げタイプの授業ではないことが大事なのだと思います。積み上げ型の場合は当然、基礎が分かっていないとその上のレベルの授業に参加するのは非常に苦痛を伴うことになってしまうでしょうから。

また、文字で学習者同士がインタラクティブに意見交換したりするのもレベル差が大きいと難しいかもしれません。佐久間さんのご実践の中には、3,4人のブレイクアウトルームでたくさん話すという部分があったと思いますが、この場合は相手のレベルに合わせて話し方を調節したりすることもできます。聞く方も分からない部分はどんどん流れていってしまいますからそれほど気にもならないでしょう。 しかし学習者の書いたブログなどを読んでコメントするようなタスクの場合は、レベル差が大きいと難しいかもしれません。

ということで今日は久しぶりにブログを書いてみました。今日はそれほど面倒くさいという感じがしなかったので、これからまた元の調子で書いていけるんじゃないかと思います。

なお、ここでご紹介したドラマなどのコンテンツを通して第二言語を習得するのはCBLL(Content-Based Language Learning)と呼ばれていて、このブログの中を「CBLL」というキーワードで検索してみると、もっと他にもたくさんの事例の紹介をご覧になることができます。僕自身も英語やヒンディー語をこのような形で楽しみながら勉強しています。

そして冒険は続く。

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【参考資料】
アウトプットを中心に据えた授業(1/2) 前提編 | さくまログ
https://shirogb250.com/2020/09/09/output-class/

アウトプットを中心に据えた授業(2/2) 実践編 | さくまログ
https://shirogb250.com/2020/09/10/output-class2/


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