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Advanced Squad Leader (ASL) 勝利への道:戦術探究 理論編-分隊の展開

今回から戦術探求の記事を「理論編」と「実戦編」に分けます。ちなみに、次号の「ASL Journal」への寄稿記事は、こうした記事からチョイスして加筆修正のうえ、英訳したものとなるでしょう。

1個の分隊を展開して2個のHS(半個分隊)にする……今回は、ルール的には簡単で、でも奥が深い展開について考察しましょう。

初心者はソ連軍担当のススメ

筆者が初心者の頃、分隊の展開をまったくしなかったばかりに、負けにつながった対戦がいくつもありました。

なんか、部隊が全体的に弱くなる気がしたのですね。確かにHSだけとってみると、火力も射程もいかにも脆弱そうです。

それは、初心者心理あるあるの1つなのですが、今の筆者は、そんな初心者に対して、「ソ連軍を担当しましょう」とアドバイスします。

大戦期(特に初期)のソ連陸軍は、優秀な分隊長や小隊長に恵まれず、分隊・小隊レベルの指揮はお粗末で大雑把でした。建物1棟の攻略に、漫然と1個大隊を差し向けるのは稀ではありませんでした。なので、分隊を2班に分けるという、指揮統制に緻密さを要することは、もってのほかであったのです。

それを反映して、ASLではソ連軍など一部の軍隊は、展開ができないルールです。把握しておくべきルールを少しでも減らす意味でも、そうした軍隊を担当しましょう。

展開のメリット

以前の記事で書いたように、筆者は、SWを持っていない分隊は極力HSにする方針です。初期配置時に許された分隊相当×10%はもちろん、1~2ターン目は指揮官をスタックさせて展開を試みます。SWを持たない分隊が捕虜を得た際にも、HSに分けます(A20.5)。指揮官が少ない割に分隊数が多いシナリオでは、全部はできませんが、「少しでも多くをHSに」を努力目標としています。

ただし、白兵戦が多くなりそうなシナリオでは、8-3-8や5-4-8のように、展開すると1個HSの火力が元の半分を下回る分隊は、展開しないこともあります。

また、損耗や回収によってHSがSWを所有した状況になれば、作戦行動に支障ない限り、(SWを持っていない)分隊に引き渡すか、別のHSと統合するよう努めます。

さて、展開のメリットは、1つには歩兵ユニットの絶対数が増え、敵が対処すべき標的が増えることです。標的が増えるということは、撃ち漏らす標的が増えるということ。撃たれる立場の目線で言い換えるなら、それだけ生残するユニットが増えるわけです。

さらに、行けるヘクスが増え、時間の節約ができます。前方にある2ヘクスからなる建物に敵HIPがいないか確認するのに、1個分隊では2ターンかかってしまうのが、2個HSでは1ターンで済むといったように。

展開のデメリット

メリットもあればデメリットもあります。自明なことですが、火力が半分以下に減り、煙幕手榴弾はダメ、そして混乱から回復する成功確率が少し減ることです。せっかく接敵しても、前進射撃や白兵戦でその敵を追い散らすのは困難なことのほうが多いでしょう。

このデメリットを減らすには、前進射撃フェイズの時点でほかの味方と『隣接』しているように、移動フェイズに動くことです。そうすればFGを組んで射撃したり、一緒に白兵戦を仕掛けるという選択の余地が生まれます。

また、ささやかなデメリットとして、展開することで指揮官の位置が悟られるというのもあります。特に、極力隠蔽状態を保ちたい防御側は、対戦相手に「そこに9-2指揮官がいるのだな。ということは、HMG分隊もそこにいる」などと知られてしまうのは、あまり気持ちのよいものではありません。成功確率は下がっても、7-0指揮官のような低価値指揮官に展開を委ねることも考慮すべきでしょう。

攻撃側のHSの役割

HSの役割は、攻撃側と防御側とで異なります。まず攻撃側から説明します。

攻撃側のHSの役割は、基本的に“露払い”です。撃たれたくない高価値ユニット(キラースタックやAFV)を温存しつつ、敵の脅威を特定・減殺する目的で先行します。

先行といっても、やみくもに前に進むのではなく、基本的には次の方針で移動します。
1. 最前線の敵隠蔽ユニットに近づき、臨機射撃を誘うか、そのヘクスに入って隠蔽状態を失わせる。
2. 敵HIPユニットや地雷原を捜索する。
3. 主攻勢のユニット群とは異なるルートを進み、一部の敵を誘引ないしは動けなくして主攻勢を容易ならしめる(ある種の陽動作戦)。
4. 敵ユニットの間をすり抜けて後方に進出する。これによって、潰走路が閉じられるのを恐れた敵ユニットが後方にさがるよう促す。
5. 敵の狙撃兵カウンターのあるヘクスへ行き、狙撃目標となる(行かせるのは1個だけでOK)。

上記の移動のなかで一番多いのが、1.の「隠蔽はがし」です。近づいてきたHSに対し、敵が撃ちたい誘惑にこらえきれず撃ってきたら、
・敵の戦力が露呈する。
・(ROFを維持できなければ)臨機射撃マーカーが置かれ、さらに撃つ能力が減衰する。
という効果を確実に得られます。

もちろんそれは、HSが損耗・混乱するというリスクと引き換えに得られるものです。これも初心者あるあるですが、敵の射撃を誘発したいばかりに、「あえて開豁地を突き進ませる」のは極力避けましょう。HSも貴重な戦力です。何か特段の理由がないかぎり、TEMの恩恵を受けながら進むようにします。

防御側のHSの役割

防御側であっても、展開することで頭数を増やし、敵が対処しなくてはならない脅威を増やすというメリットは共通していますが、役割はがらりと変わります。

1つは、ピケット(哨所)の役割。最前線に置いて、接近してくる敵を早期に確認状態とし、進撃速度を少しでも遅らせるという考えです。それが、1個の隠蔽HSに過ぎないとわかっていても、敵は目の前をFFMO/FFNAMのペナルティを受けながら、通り過ぎたいとは思わないものです。結果として、何もいなければ6ヘクス進めたところが、4ヘクスしか進めなかったというふうになります。

プレイヤーによっては、最前線のHSを人身御供的な扱いとすることもあります。緊急防御射撃も含めて撃ちまくって、その場で最期を迎える前提の扱いですね。これは賛否両論でしょうが、個人的には「決死」のピケット隊は設けません。かならず潰走路は確保して、逃げられる余地は残します。まあ、それでも衆寡敵せずで圧殺されるパターンは少なくないですが……。

もう1つは、ピケットとは逆に、戦線のかなり後方の勝利条件建物に置くやり方です。その建物は複数ヘクスからなり、上階もある大きなものであるのが前提です。下図のように、そこの上階で、敵が到達するのにもっとも移動力を要するヘクスに置きます。この場合、HSの役割は、とにかく相手にその建物を支配されないこと。撃たずに、じっと隠蔽状態を保つことに徹します。

また、もしHIPが可能で、シナリオの最終ターンが防御側ターンであるなら、勝利条件区域からちょっと離れたところに潜ませるのも手です。最後の最後のMPhに、敵にいったんは獲られた(現時点ではカラの)勝利条件区域に入って、支配権を取り戻すのです。これはちょっとずるい戦法に思えて、個人的には好まない(こうやって勝ってもあまり嬉しくない)のですが、ルール違反でないので、ときには一考に値します。

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