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Advanced Squad Leader (ASL) 勝利への道:戦術探究 実戦編 J33 THE SLAUGHTERHOUSE (1)

(冒頭再掲)

シナリオの概要

1945年2月22日、西プロイセン(現ポーランド)、グラウデンツ。先月27日に「要塞」と宣言された(要するに「死守せよ」という扱い)グラウデンツ。要塞の防衛にはヘルマン・ゲーリング師団の残存部隊をはじめ、ドイツ国防軍、ドイツ空軍、憲兵など様々な部隊が投入された。ソ連軍は執拗に攻勢をかけ、守備隊に多大な損害を与え、砲兵と対戦車砲はほぼ壊滅するものの、対空砲はまだ多数残っていた。これらの脅威を除くため、装甲部隊と砲兵の支援をもって攻撃を再開。督戦のために政治将校も同行した。タバコ工場と屠殺場の支配権をめぐって激しい戦闘が続き、特に屠殺場は何度も支配陣営が変わった。守備側の英雄的な奮闘も、ソ連軍の猛攻を食い止めることはできず、工場を押しのけて進撃し、ついには街の中心部にある鉄道駅に到達した。運命に翻弄された要塞は3月5日まで持ちこたえたが、それまでに人的にも物的にも法外な犠牲を払った。

プレイエリアは以下のとおり。青い網掛け部分がドイツ軍の配置エリア。そこから左がソ連軍の配置エリアですが、(前進観測兵を除いて)後方に配置する積極的な理由はなく、実質的に使用する範囲は、右サイド約1/3のエリアです。ソ連軍の勝利条件は、ゲーム終了時に20H3と22F4の建物(1.5レベルの工場とみなす)を支配していることです。

防御側のドイツ軍の初期戦力は以下のとおり。ELRは2です。くわえて、対戦車地雷原4戦力、対人地雷原24戦力、鉄条網4個が与えられます。

攻撃側のソ連軍の初期戦力は以下のとおり。ELRは3です。8-0指揮官1人を9-0コミッサールに交代できます(ふつうそうするでしょう)。

主なSSRは、ドイツ軍はレベルCのブービートラップを仕掛けていること、両軍とも格闘戦が宣言できることです。

ゲームの長さは7ターンです。

今回は当方が、防御側のドイツ軍を担当します。

「過去問」の解答例は参考になる?

『ASL Journal #3』には、このシナリオの解説記事のようなものがあり、「H4: ?, 2-3-6」などと文字で初期配置案が記されています。それをVASLで示すと以下のとおりです(対空砲2門と前進観測兵はHIP)。

ぱっと見ただけで、攻守ともに、ちょっと疑問に思えるものがちらほら。

ドイツ軍
・工場に対戦車地雷原を置いたのはなぜ?(VBMフリーズ対策?)
・対空砲をそんな後ろにしたのはなぜ?
・?マーカーは9個与えられているのに8個しか使っていない(度忘れ?)
・指揮官+3個ユニットを山積みしたキラースタックを3つも作る必要はあるか?(あとでばらけるつもり?)
・下部盤端エリアの防御がないのはなぜ?(敵の機動に合わせ、そちらに戦力を振り向ける?)

ソ連軍
・LOS内にさして目標がないのに超キラースタックは必要?
・ISU-122とT-34/85の位置はもっとベターな場所があるのでは?
・高層建物がほかにあるのに、あえて見通しの良くない場所に前進観測兵を置く理由は?

こうしたツッコミポイントは反面教師となるものですが、首肯できる点もあります。例えば、ドイツ軍は当然ながら、2つの工場(以降、上をタバコ工場、下を屠殺場と呼ぶ)に戦力を分散していますが、屠殺場をより強固にしています。タバコ工場は、中盤には占領されることを前提にしているようです。もし2つに同じくらいの戦力分散をしたら、各個撃破されるリスクが大きいと自分も考えています。また、対人地雷原と鉄条網を数珠つなぎにしているのも、うなずけます。この初期配置案から得るものはあまりないですが、確認してすっきりはしました。

OBA対策として対空砲はそこに置く

さて、本題の自分の初期配置に移ります。

大方針は、タバコ工場は、敵の戦力をいくらか引きつける役割にとどめ、中盤には守備隊は全滅し、工場は獲られる覚悟。そして、屠殺場を文字通り、ソ連軍兵士らの屠殺場へと設計し、死守。つまり、『ASL Journal #3』の書き手と同じ考えです。その逆にしなかったのは、屠殺場のほうがタバコ工場より1ヘクスだけ最前線から遠いこと、1ヘクスだけ面積が大きいこと。プレイエリアが狭いと、そのたった1ヘクスの差は大きいのです。

では、細かい点を検討していきましょう。

まず、敵のOBA対策です。24FPの砲弾が雨あられと降ってくるのは恐ろしいの一言。ビビって思考停止する前に、この脅威を見える化(数値化)してみましょう。
・無線接触の成功確率は72%
・1枚目の黒チットを引く確率は5/8→62.5%(弾薬は豊富)
・狙ったヘクスに観測弾が落ちる確率は1/6→16.6%
これらの確率を掛けていって、1ターン目にどんぴしゃりに観測弾が落ちる確率は、実は7%しかありません。
なーんだ、怖くないじゃん……のはずはなく、毎ターンこの試みができるし、観測弾の着弾修正もなされるので、24FPを食らうのは時間の問題です。

対策としては3つの方法があって、
・極力、隠蔽状態を保ち、追加チット引きを強いる。
・極力、戦力を分散する。
・前進観測兵を攻撃する。

このうち戦力の分散は無理があります。縦深がほとんどないうえに、守るべき勝利条件建物は2つだけなので、どうしてもここに寄り固まってしまいます。

他方、死角の生まれやすい市街地でもあるし、隠蔽を保って追加チット引きを強いるのは、比較的容易かもしれません。もちろん最前線で踏ん張る半ば孤立したピケット隊は、露呈してしまいますが、ここに砲弾が落ちてもHS1個の犠牲で済みます。

よく考える必要があるのは、前進観測兵を攻撃することです。HIPとはいえ、どこにいるか推測はわりとしやすいです。タバコ工場と屠殺場の両方にLOSが通り、高い場所といえば、ほぼ決まりです。下図の赤く網掛けした建物の最上階の3ヘクスのいずれかです。オレンジ色で網掛けした建物は、LOS障害(同じ高さの建物)が途中にあるので選択肢とならないでしょう。

これら3ヘクスを、屠殺場の近くの開豁地に置いた対空砲でひたすら撃ちます。4連装2cm対空砲は10FP、88mm高射砲は地域目標射撃(TH8、9FP+3)です。前進観測兵は7-0指揮官でしょうから、わりあい確度高く混乱状態にさせられます。

問題は、自分がそういう対処をとるだろうと、相手が読み切って、違うヘクスに置く可能性。不便があっても、W8あるいは『ASL Journal #3』の書き手のように低層建物に置いてしまっては、対空砲の潜在標的が多くなりすぎて、無理目です。

相手が自分の企図を読み切るか、そうしないかを100%の確率で予測することは不可能。これは対人戦の醍醐味ですが、きりきり舞いさせられるジレンマでもあります。

では、結論はいったん保留して、異なる視点から物事を考えてみましょう。

仮に前進観測兵がいないとした場合、4連装2cm対空砲と88mm高射砲をどこに設置するかです。まず、ルール上、建物内に大型の対空砲は置けないので、そこは除外します。もし、隠蔽地形にこだわるなら、わずかな繁みと林に限定されてしまいます。最前線は、好適な場所はなく論外。なので、結局は『ASL Journal #3』の書き手と同じような場所になるでしょう。つまり、敵が後方へ回り込むことを前提として、盤端近くの後方に設置します。それも相手に読み切られ、ソ連軍が後方へ回り込んでこないで、正面から平押ししてきたら、対空砲はまったく出番はなくなります。

となると、非隠蔽地形の開豁地か道路に置くのが良策のようです。ルール上、こうした地形にも初期配置の際にHIPで置けますが、統制状態のソ連軍ユニットからLOSを引ける時点で、?カウンターを乗せて露呈します。

ソ連軍は、ただ俯瞰するために、あるいはキラースタックをレベル2建物の最上階にユニットを置く可能性があり、置き場所によってはしょっぱな(回復フェイズ)から露呈する危険性があります(もっとも、前進観測兵を攻撃すると決めたら、どっちにしても1ターン目の防御射撃フェイズに露呈しますが)。

ここは悩ましいところです。まず決めるべきは、
1.前進観測兵を探索射撃するつもりはないが、最序盤で露呈してもOKな場所に置くか
2.最序盤で露呈するのは回避して陰に置くか
です。

1.の場合、例えば下図の青く網掛けしたヘクスに置いて、とにかく敵に撃ちまくるスタンスとなります。

「撃ちまくる」前に、敵から撃ちまくられる、あるいはISU-122から煙幕弾を撃ち込まれた上で、爆薬を置かれたり白兵戦を挑まれるのは必定でしょう。攻撃判定の出目が大きくて無傷でいる可能性に賭けるのは、どう考えても得策ではありません。

よって2.がベターとなりますが、それはおおむね工場の背後となる位置で、『ASL Journal #3』とさほど変わらず堂々巡りです。

考えが、ぐるっと1周回って、前進観測兵を攻撃することに決めました。ただし、いきなりは撃たれない位置です。死角なども考慮して下図の位置にしました。

ふぅ、対空砲の居場所を決めるだけで疲れてしまいました。「パトラッシュ、疲れたよ。なんだかとても眠いんだ」状態になる前に、いったんここで切り上げましょう。

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