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Advanced Squad Leader (ASL) 勝利への道:コラム―「早指し力」=「直観力」を前向きに使いこなす

世界経済フォーラムが発行した『Future of Jobs』(仕事の未来)という報告書には、働く人にとって重要なスキルベスト10というのがあります。

そのランキングの上位2つは「分析思考」と「創造思考」なのですね。

スキルといえば、会計とかプログラミングとか〇〇1級の資格といったものだと思っていたので、報告の結果は超意外でした。

ビジネス書には、多種多様な思考法が出てくるのですが、割とそういうのを軽んじていました。でも、全然バカにできないぞと思い直しているところです。

ところで、個人的に注目している思考法があります。

それはOODA(ウーダ)ループ思考法。

米国空軍のジョン・ボイド大佐が編み出した思考法で、秒で判断が求められる戦闘機パイロットを念頭にしたものです。

「OODA」とは、Observe(観察)、Orient(情勢判断)、Decide(意思決定)、Act(行動)の頭文字。

基本的に、観察→情勢判断→意思決定→行動の思考をループ状に繰り返すというもの。

実際はもっと複雑ですが、極めたい方は『OODA LOOP(ウーダループ)』(東洋経済新報社)を読んでみるとよいでしょう。

個人的には、日本人が書いた『OODAループ思考[入門]』(ダイヤモンド社)がおすすめ。本書では、「みる」→「わかる」→「きめる」→「うごく」となっており、シンプルでわかりやすい内容です。

OODAの何が自分の心に刺さったかというと、それは「直観」をものすごく重視していることです。

かつてビジネスの現場で直観を活用することは、あまり褒められたものではない雰囲気がありました。

今は少し風向きが変わって、直観的に決めて、早く行動することの価値が認められつつある時代です。

現実問題、いちいちロジカルシンキングとかクリティカルシンキングをやっていたら、時間がいくらあっても足りませんし。

このOODAループ思考法、ウォーゲーマーにもおすすめの思考法です。

去年11月に、写真修行を兼ねた、足掛け2年の屋久島と青森でのワーケーションを終え、関西へと再移転しました。

それをきっかけに、超々久々にサークルにお邪魔して、ASLの対面戦をしました。

それまでは週1で一度に1~2ターンだけプレイするVASLがもっぱらで、続きの次のターンはどうするか、じっくり考えながらプレイできました。

しかし、1日で終える対面戦は早指しが求められます。

ここでOODAループ思考法を発動して乗り切りました。

要するに、数秒の「みる」→「わかる」→「きめる」→「うごく」の思考後に、直観で「この手で行ける」と思ったら、迷わずどんどん指していったのです。

直観のささやきがない場面については、熟考しました。「このユニットを準備射撃させれば…、あるいは移動させれば…、リスクは…、メリットは…」というふうに。

直観に従って進めたら、悪手だったということはほぼありませんでした。

逆に直観を押し殺して、熟考モードで指した手がダメだったことのほうが多かったかな。

直観を活用するには、大きな注意点があります。

それは、自分が熟練している分野でしか当てにならないということです。

熟練していない分野でのひらめきは、山勘以上にならず失敗のもとです。

山勘、霊感、直感でなく「直観」。英語で「intuition」。

スティーブ・ジョブズが、大学の卒業生に送った有名なスピーチに、「…most important have the courage to follow your heart and intuition.」というフレーズがありましたが、このとき使われた「intuition」です。山勘で卒業後の進路を決めてはいけません。

将棋のプロ棋士が、ゼロコンマ秒で最善手がひらめく脳の仕組みを解明しようとした、理化学研究所の実験があります。それによると、尾状核が関係しているそうです。

尾状核は大脳基底核にある部位で、これは「複数の選択肢の中から一つの行動を効率よく選択する」機能を持っています。優秀な棋士ほど、この部位が強く活性化しました。つまり、尾状核というある種のデータバンクにどんどん情報を放り込めば、的確な早指しができる理屈です。

そのために必要なのが熟練することです。

『OODA LOOP(ウーダループ)』では、剣道の修練の心得「竹刀が竹刀でなくなり、意識が無意識になる」を引き合いに、「日夜鍛錬」することの重要性が説かれていますが、そこまでやって本物の直観力が身につきます。

でも、戦闘機パイロット、プロ棋士、CEOと違って、どこまでいっても趣味でしかないことに、日夜鍛錬は不可能な相談です。

そこで大事になるのが、ピンポイントで鍛錬を積み重ねていくことです。ASLなら、歩兵の白兵戦の経験を重点的に学ぶ、戦車戦を集中的にプレイするとかですね。ある時期に特定のテーマを集中的に学習することで、日夜鍛錬ができない不利をだいぶカバーできます。

ダラダラとでも続ければ、そのうちその分野の直観力がついてきます。直観力が磨かれていない分野は、対戦の現場で注意深く熟考します。直観と熟考の合わせ技で、「会場が閉まる時間になっても最終ターンが終わらない……」という事態はだいぶ避けられるでしょう。

付記:
孫子やクラウゼヴィッツを専門とする守屋淳氏の『勝負師の条件』(日本経済新聞出版)という良書があって、それには直観の「判断は、それがパターン化してしまうと相手から行動を読まれる元凶になる」とあります。

なので、「この人は必ず緊急防御射撃する」「この人は1:2の不利でも白兵戦を仕掛けてくる」というふうに対戦相手から読まれてしまうのも危険です。

そこで直観が「これが最善の一手」とささやいても、20回に1回くらいは別の手をあえて指して、相手の心をざわつかせる心理戦もありだと考えます。

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