【書評】世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか~経営における「アート」と「サイエンス」(山口周2017)

■要約(たぶん)

美意識を鍛える理由を一言で言うならば「適切な意思決定のための判断基準を作るため」といえるだろう

美意識を高めることで、内なる判断基準を持つことができ、物事を相対化しながら判断できるようになる。要は、組織や周囲に流された判断をするのではなく、自らのポリシー(考え方)に沿って思考を進めることができるようになる。加えて、美意識を高めることは、物事の本質を見抜く(余計なものは切り捨て、重要なことに焦点をあてる)ことにも役立つ。そういったことが、複雑な世界(VUCA)で必要な意思決定の方法である。

では、なぜ上記のような判断基準が必要なのだろうか。VUCAな世界では、制度が現実に追いつかない。そのような世界では、物事を現行のルールに合わせて決定するのではなく、「何が良いことなのか」を自ら考え規定する必要がある。また、ある程度単純な世界であれば、論理的に考えることで正解を出すことができたかもしれないが、VUCAな世界では、問題の原因が複雑かつ複合的である場合が多く、論理的思考だけでは解を導き出すことが難しくなっている。そのような場合、あるべき姿を規定するために、「何が善いのか」を自ら判断し、それに向かって進んでいく必要がある。そして、善きものは人をひきつけ、さらに問題解決に必要な協力を得ることがしやすくなるのだ。

では、どのように美意識を鍛えていけばよいのだろうか。まだそれはよくわかっていないので、今後は美意識の鍛え方を知っていきたい。この本の中では、詩や文学に親しみ、哲学を学び、絵画の鑑賞(VTS)などが推奨されていたが、自分にあった美意識の鍛え方を学んでいこう。

■感想

「ソマッティック・マーカー仮説」というのが本書で紹介されてた。「適時・適切な意思決定には理性と情動の両方が必要であるとする仮説」である。今まで、美意識に興味のなかった自分としては、この本を読むことでこれから美意識を鍛える必要があるな、と強く感じることができた。

過去から現在に至るまで、論理的思考ができないなぁと悩んでいたので、論理的な思考を向上させるための本を多数読んできた。自分の勤める会社も、論理的思考を非常に重要視している。ただ、そのように論理的思考を鍛えても、自分が仕事の成果を残すことができないのは、物事を統合する力、すなわちアーティスト的な思考が足りないのではないかと感じた。これは、あくまでも直観だが。一方、論理的思考自体は、これからも必要になるのは間違いないので、その能力を鍛えつつ、今後はアーティスト的な思考を鍛えていきたい。

しかし、美術館とかに行ったら秒で眠くなるような自分に果たして、美意識を向上させることはできるのだろうか。。。でも、せっかくなら、日本人的な感覚での美意識を高めていきたいなぁ。

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