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これからも歌い継ぎたい「鉄道の歌」

何年前だったか、明治の文豪・森鴎外の生家のある津和野を訪れたとき、JR津和野駅前に黒山の人だかりができていて、何だろうと思ったら、停車中のSL(蒸気機関車)の前で順繰りに記念写真を撮っていたのでした。

JR新山口駅から津和野駅までの山口線には「SLやまぐち号」が走っています。沿線の美しい風景を楽しみながらレトロ気分を楽しめる人気の観光列車です。煙をもくもくとあげながら走る蒸気機関車にこれだけ人々が熱狂するのは日本だけかもしれません。

うっかり忘れていたのですが、今年は「鉄道開業150 年」。新橋・横浜間に鉄道が開業した1872年10月14日、日本は文明開化の道を加速させました。

10月14日は「鉄道の日」で、今年は全国各地で記念キャンペーンが行なわれています。テレビでもNHKが総力をあげて(?)2週(10/ 3~16)にわたって関連番組を放映中。

昨今の鉄道人気の盛り上がりは、かつては男性中心の趣味であったのが、鉄道好きな女子(鉄子)の増加によって、老若男女を問わないメジャーな趣味になったことが大きい。

日本では鉄道ファン、鉄道マニアを“鉄道オタク”(略称:鉄オタ)と呼び、変わり者扱いされていた感がありました。

“鉄オタ”といってもいろいろ

一口に“鉄オタ”といっても最近は細分化されてきていて、代表的なのは、

乗りつぶすのがメインの「乗り鉄」
車両を研究する「車両鉄」
鉄道撮影を主とする「撮り鉄」
録音や音響を研究する「音鉄」「録り鉄」
時刻表を研究する「時刻表鉄」
鉄道模型を作ったり走らせたりすることを楽しむ「模型鉄」
etc.

線路に下りたり、乗客に暴言を吐いたりするなど、マナー違反が社会問題化している一部の「撮り鉄」のせいで“鉄オタ”全体のイメージが悪くなったのは否めません。

それはともかく、多種多様な“鉄オタ”が存在するのは、鉄道の歴史がそれだけ人々を魅了してやまない証拠でしょう。“鉄オタ”にはまだまだ知られていない種類があるようです。

この記事で初めて知ったのが「葬式鉄」。鉄道路線の廃止や車両のラストランを見送りたがる人たちで、そういえばテレビのニュースで時々見ますね。

鉄道の最期をみんなで共有することが好き。なので、「いままで多くの人を運んでくれてありがとう!」。ねぎらいの言葉をかける光景が展開されます。ちなみに、最期を迎えた車両は、博物館にでもゆくような名物車両以外はバラバラに解体されるそうです。

「dヒッツ」というサイトでは“乗り鉄”“撮り鉄”に続く新しい楽しみとして「歌でめぐる鉄道の旅」を提唱しています。

歌詞に鉄道が登場する歌やCMソング、イメージソングなど25曲が紹介されていますが、それ以外にも唱歌・童謡(「鉄道唱歌」「汽車ポッポ」「線路は続くよどこまでも」)など含めるとけっこうな数ですね。

確かにこれら「鉄道の歌」を歌ったり聴いたりすることで旅情をそそられるかもしれません。私の通っているオカリナ教室では今夏、レッスンの課題曲に「あずさ 2号」(狩人)が出ました。

曲後半の高音での3連符の連続に苦闘した記憶しかありません。「あずさ2号」は、新宿─松本(長野県)を走るJR中央線特急でしたが、ダイヤ改正などでいまは存在しない列車。歌によって、人々の記憶に残るのみ…。

(渡辺史子さんの一人二重奏)

忘れがたい名曲「花咲く旅路」

JRがまだ国鉄(日本国有鉄道)といわれたころから、旅行誘致キャンペーンをたくさんやってきたので、CMソングから名曲が生まれました。よく知られているのは「いい日旅立ち」(山口百恵)、「クリスマス・イブ」(山下達郎)ですが、忘れがたいのは「花咲く旅路」です。

サザンオールスターズのキーボード・原由子さんのソロ曲で、作詞・作曲は桑田佳佑さんです。JR東海のCMソングに用いられました。

リリースされたのが平成3年(1991)、つまりバブルが弾ける寸前、世の中が狂乱していた時代です。そういう騒がしい世相に反して、ゆったりとした調べに乗せて原由子さんの素直な歌声は一服の清涼剤でした。

曲中に当時の社会を揶揄するような歌詞が出てきます。

何処へと鳥は鳴き
夢出ずる国をゆく
世の中はああ世の中は
なぜこんなに急いてと流れてく♪

さすが、というか、桑田佳佑恐るべし。時代をよくとらえていました。

(中原蘭さんのオカリナ演奏。いつもながら素敵ですね)

ローカル線に乗って車窓に広がる田舎の風景を眺めていると、この歌が自然と脳裏に浮んできます。

個人的には、生まれてからずっとクルマを運転したことがない“無免許人”。地方を旅するとき、移動手段は徒歩、バス、鉄道、飛行機、ごく稀にクルマ(タクシー)も。でも、一番お世話になったのは鉄道です。

目的地の到着時間がわかるのも魅力でしょう。日本の鉄道の正確さは世界に誇れるもの。訪日外国人がびっくりするのも当然です。

10月11日から外国人観光客の入国規制が緩和され、国内的には全国旅行支援が始まりました。本格的な観光シーズンの到来です。

海外からやってくる観光客のみなさんには、ぜひ、地方のローカル線に乗って日本の田舎を堪能して欲しいですね。

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