樹高図を眺めて②~スキー場跡地の植生回復~
樹高図を眺めていると、不自然に樹高の低い領域を見つけることがあります。その一例が、スキー場です。
スキー場では、滑走するコースやリフトが建てられている範囲は、当然ながら樹木が伐採されています。そのため、樹高図をみると、網目状に樹高の低いゾーンを見つけることがあります。
下の図は、日光市内にあるスキー場です。よく見ると、北側のスキー場はコース上ははっきりと樹木がないことがわかりますが、南側のコースは植生に埋もれているようです。
陰影起伏図を作成してみると、ここは比較的なだらかな丘陵であることがわかります。
地理院地図を確認してみると、北側はエーデルワイススキーリゾートという名称で現在も営業しており、南側は建物こそ存在すれど、スキーコースやリフトの存在は認められません。
その後、調べていくと、ここには「メイプルヒルスキーリゾート」がかつて存在していたようです。1989年開設、2000年閉鎖とのことですので、閉鎖からすでに24年の年月が経過しています。
メイプルヒルスキーリゾートの現在については、複数の廃墟ブログから確認することができました。(URL貼らせていただきます)
また、栃木県立図書館の提供で、以下のような閉鎖背景がわかる文献を調査した結果もありました。(図書館に依頼するとこのような文献調査をしていただけるのでしょうか?)
さて、植生に埋もれつつあるゲレンデを見ていきます。下の図は、「メイプルゲレンデ」を中心とした「メイプルヒルスキーリゾート」の中心部です(名称は上記URLの「追憶のゲレンデ」さんより確認しました)。1m間隔の等高線を重ねた図も併せて作成しました。
メイプルヒルスキーリゾート内でも、植生が回復しつつある範囲と、そうでない範囲の分布が確認できます。それはどういった原因なのでしょうか?
下の図で整理します。
植生が回復しつつある範囲を水色、回復の遅い範囲をピンクで囲って示しました。メインコースであろう「メイプルゲレンデ」では比較的植生の回復が早く、10m程度の樹高の植生が分布しているようです。一方、その南東側の「プラタナス」コースや、西側の駐車場として利用されていた土地は、いまだ樹木はあまり回復していないようです。
ここで、それぞれの地形の特徴を観察してみます。
植生の回復している「メイプルゲレンデ」は尾根に近い斜面上に位置しており、人為的な掘削等による整地がされた範囲が小さいように見受けられます。これに対して、駐車場は大規模な掘削により造成された土地であると推測されます。また、「プラタナス」コースは造成の影響は大きくはなさそうですが、周囲より標高が低く、水の集まりやすい谷地形であることが認められます。
さて、植生が回復している範囲・回復していない範囲で、地形的特徴の差異を見出すことができました。駐車場の範囲は、表層を大部分剥ぎ取っており、また駐車場として土地利用するために整地などがされていたのではないかと思われます。こういった大規模な攪乱では、土壌層がなくなってしまうことから、植生の回復が遅れるものと推察します。
また、南東側コース「プラタナス」は、明瞭な谷地形であり、大雨時には周囲から水が流入して表面流が発生していることが推測されます。表面流は土壌を洗い流してしまい、裸地化をすすめます。このような地形条件にある「プラタナス」は、今後も植生の回復が難しいのではないかと思います。このようにして利用されなくなった土地が、裸地化していき、将来的に土砂災害のリスクのある土地として移り変わっていくこともあるのかもしれません。
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夏休みの間に、高分解能植生図・地形データを眺めて、今後の研究材料を探したいと思っています。そのため、#この夏やりたいことのハッシュタグをつけさせていただきます。
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