3.新薬師寺 薬師如来坐像
十二神将で有名な奈良新薬師寺、今回は本尊の薬師如来坐像のご紹介です。
像の詳細
国宝に指定されている。
新薬師寺本堂所在 本尊
木造
像高 191cm
昭和50年(1975)に行われた文化庁の調査の際、像内から平安時代初期のものとみられる法華経8巻が発見された。本像も平安時代初期の作品だと考えられている。
薬師如来について
薬師如来は人々を病気や災難から救う如来。正式には薬師瑠璃光如来という。
東方浄瑠璃世界という東の果ての清浄な国土に住む。
阿弥陀如来が来世での利益(死後に極楽浄土に生まれる)を説くのに対し、薬師如来は現世利益(今生きているこの世で望みが叶う)をもたらす。
万病を治す薬が入った薬壺を持っている。
日光菩薩・月光菩薩を脇侍にして薬師三尊像とされることが多い。
眷属の十二神将を従えている。
像の特徴
大きく見開いた眼が特徴的。
表情はおだやかで、ふっくらとした肉付きの良い顔に、重厚感ある体躯。
口元目元などに彩色が施されている以外は、素木造り(塗りをせず自然のまま)となっている。
頭と胴体の体幹部分は一本のカヤの木から掘り出され、手と脚の部分は同じ木から切り出した木材を組み合わせて造られている。(胴体部分の幅95㎝と考えると、相当な巨木から造られている。)
かつては一本の木から彫り出されたと思われていたが、昭和50年(1975)12月に行われた文化庁による修理調査で、寄木で造られていることがわかった。
この寄木の部分は縦木(丸太を輪切りに切り出した材木)を組み合わせて使い、木目を合わせて一本の木から掘り出したように見せている。
横木に比べ、手間のかかる縦木を使っているところに作者のこだわりが感じられる。
手指は大きく太い。
右手のポーズは施無畏印といい、「畏れなくてよい」という意味。
左手のポーズは与願印といい、「願いを聞き届け、成就させる」という意味で、薬壺を持っている。
光背には6躯の化仏が配されている。
像本体と合わせると7躯となり、『七仏薬師経』に説かれている七仏薬師(薬師如来を主体とした七尊の仏)を表現しているとみられる。
像が造られた背景
寺院名の新薬師寺は「霊験新たかな薬師寺」という意味。
天平19年(747)、聖武天皇の病気平癒を祈って光明皇后によって創建された。
この時期、聖武天皇の病気が治るよう薬師悔過の法要を行うこと、都と諸国に六尺三寸(約191㎝)の薬師如来像七躯を造立すること、薬師経七巻を写経することが命じられていた。
薬師悔過とは
悔過とは過ちを悔い改めること。
薬師悔過とは薬師如来の前で罪を懺悔することによって、心の穢れを取り除いて悪いものを祓い、福を招くために行う法要。
創建当初、新薬師寺は東西の塔や金堂など多くの建物が立ち並ぶ大寺院だった。
金堂は東西60メートルの長さで、薬師瑠璃光如来(薬師如来)を含む七躯の七仏薬師像、七躯それぞれに脇侍の菩薩が二躯、そして十二神将、合わせて三十三躯もの仏像が立ち並んでいたとされる。
創建当初のお堂や仏像は、暴風による倒壊や落雷による焼失で失われ、唯一残ったお堂が現在の本堂。
薬師如来坐像は創建当初のものではなく、平安時代初期、8世紀末頃の作と見られている。
現在も新薬師寺では薬師悔過の法要が行われている。
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