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"オープンコミュニケーション"を強者の文化にしてはいけない

 毎年恒例の情シスSlackのアドベントカレンダーに今年も参加させていただきます。というか毎年1回しか記事を書いてないですが気のせいです。今年も懲りずにポエムを投下します。


 チャットツールでオープンコミュニケーションが叫ばれるのはもはやビジネスシーンでは自然でしょう。Slackは迅速な情報共有と意思決定を可能としますが、その根幹は、オープンコミュニケーションであることは間違いありません。
 しかし、どれだけメリットを声高に叫んでも、クローズドなやり取りが無くなることは決してありません。その理由についてはありがたいことに、ネット上に読みやすい記事がいっぱいありますのでここでは深堀はしません。「Slack 心理的安全性」あたりで検索すればいっぱい出てくるかと思います。この記事では、与太話でも読みながらオープンコミュニケーションというビジネス文化に今一度思いをはせていただけますと幸いです。

 ある会社もコロナ渦において全社的なチャットツールとしてSlackの導入を行い、オープンコミュニケーションを会社目標として掲げる会社でした。 

 そんな中、若手新卒社員の退職が続く時期がありました。ふと気になることがあり、情シス部員の一人は退職した社員のSlackにおけるパブリックメッセージの割合を調べてみました。するとかなりわかりやすく、退職した社員は全員社内平均から著しく低い数字でした。社内平均のパブリックメッセージ率が55%とすると、その若手社員たちはみなな10-30%しかパブリックメッセージを送信しておらず、残りはすべてDMかプライベートチャンネルでの発言でした。一方で総発言数についてはあまり相関はなくバラバラでした。そしてもう一つ気になる点としては全員女性でした。

 思い返してみれば、彼らはみな、情シスへ問い合わせをしてくるときは必ずと言っていいほど、DMを使う方々でした。もちろん部としてオープンなチャンネルを用意しているのですが、少なくとも彼らからの問い合わせで初動でそこが利用されたことはありませんでした。彼らの日常の仕事の様子を知っているわけではありませんが、少なくともこのSlackの利用データや、問い合わせの時の様子を見る限り、同僚や上司と適切にオープンなコミュニケーションをとれていたとは思えませでした。

 誤解を恐れずに言うと、会社としてオープンコミュニケーションによる生産性の向上を掲げている以上、オープンコミュニケーションを行えない人材は会社には不要でしょう。結果としてそういう人が減ることは望ましいことだとさえ言えます。

 また、退職した理由をすべてコミュニケーションに起因すると考えるのもナンセンスでしょう。原因と結果がどちらにあるかは少なくともSlackのデータからは読み取れませんしもっと別の退職理由もあるにちがいありません。

 しかしながら、私はやっぱり、そこにそれなりに強い因果があると思ってしまうのです。オープンコミュニケーションが推奨されていても、そのメリットを享受できる人とできない人はいます。そして、もちろんデメリットも存在します(プライド、雑音によるストレス、などいろいろ。詳しくは最初に述べたように心理的安全性で検索どうぞ)。結果メリットを享受できない人は必然的にクローズドなやり取りを好みます。結果、そこには、結局グループ内の様々な力関係が働くものとなり、強いものがメリットを享受でき、弱いものはデメリットを押し付けられる形を生みます。上記の与太話においては、それが新卒入社の若手で女性の社員だったのではないかと私は思ってしまうのです。

 繰り返しになりますが、オープンコミュニケーションはもはや今風のビジネスシーンにおいて自然なもので、価値観として認められつつあるのは間違いないでしょう。しかし、その価値観は、グループ内の強者側から一方的に押し付けられるものではなく、自然発生的にグループで共有されるものでなくてはなりません。そのためにも、情シスとして、ただシステムを導入する、ただルールを制定するだけではなく、結果として導入するグループ全体をボトムアップで統一する覚悟をもって行うべきでしょう。


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