[雑記]悪の組織がおれの部屋に本の街を作る
ジジッ、ハロー。おれは鷺ノ宮だ。おれは毎日すごい冊数の本を読んでいるが、誰にも言うつもりはない。しかしこのnoteとかいうやつにはおれが最後に更新した、狂ったようにカレーを喰っていた時期の記事がデカデカと表示されていて、なんか不本意だと感じたので仕方なくこれを書いている。
本当に毎日読んでいる
日々の生活の「働いて寝る」以外の部分が、最近は本を読むか原稿を書くかデザインをやるかだけになった。たまに週イチくらいで映画も観る。夜起きるときはZONeを飲む。……本当にそれだけだ。今まで触っていたゲーム類は意識的にプレイするのをやめた。それは自分にとってまあまあの大きさの決断ではあったが、おれだってもともと片付けの魔法みたいな言説を憎んでいるのでそこの話はしない。となると、余暇を費やしている本の話をすることになる。
今年の5月ごろただカレーを食べていたときに書いていた小説が、さまざまなアーケードゲームをテーマにしていたので、おれはゲームに関連する小説や文献を何冊か読み、それから書いた。その頃は資料としての読書でしかなかったので、かなり頑張って読んだ。そのときにおれは、「なんか参考になるものを読んで書くと、説得力が増した気がしておもしろいなあ」と思った。
そのあと、ほぼ同時期にSCPとのクロスオーバーと突発性難聴が関係する小説を書いていたとき、SCPの方は関連するオブジェクトの報告書とtaleしか読んでいなかったが、突発性難聴の方は明確に読んでおきたい本があったので、ちゃんと読んでから書いた。
アーケードゲームがテーマの小説
SCPクロスオーバー小説
突発性の難聴になる小説
そしてこの後に書く次回作は……ずっと前から参加を決めていたカップリングオンリーだった。人物的にいうとそこには、ごく個人的なアンビバレントな気持ちがあったのだが、ともかく何を書くか考えたとき、自分のかつて好きだった作品に向き合ってみるのをやってみようと思った。好きの深堀り、初期衝動の追憶。つまりそれは、00年代のライトノベルを読み直そう、ということだ。
だがこれまでの二十と数年にそこそこの回数引っ越しをしてきたので、思い出の本たちはどれも手放してしまっていた。ちゃんと読んだ記憶さえいまは薄れている。だがこの国には、そこそこ古い本を探す時に必ずアクセスする、アーカイブシステムが存在する。知の源泉、星の本棚。そう──ブックオフである。
すべての本の価値をオフにする悪の組織
ここで結論を先に述べよう───2022年のブックオフは、あらゆる本の価値を無効にする悪の組織と化していた。
ブックオフといえばこちとら物心つくときから通いに通いまくり、立ち読みがまあまあ赦されていたときは立ち読みを、そうでない時は100円コーナーを漁りまくるブックオフキッズだった。新品にも転売にも興味がない性格だったので、読みたい本は安ければ安いほど嬉しかった。埼玉の片田舎に帰省するたび、自転車を借りて走らせては付近のブックオフを巡った。メジャーどころの品揃えは対して変わらなかったが、たまに折れの激しい単行本が安く買えたり、少年マンガコーナーやライトノベルのコーナーに知らんタイトルがあると嬉しくなった。気づけば何時の時代も、部屋には読んだ本と読んでない本が入り交じった超高層タワービルが建造されていた。大半はブックオフのせいによるものだった。
ブックオフに対してあの頃と変わらぬ信頼はあるが、今回は目的のタイトルが決まっているので時短を選びたかった。そういえばオンライン注文ができたはず……使ったことはないが物は試しと思い、アプリ上で会員登録を済ませ検索する。お目当ての本はどれも110円から220円で設定されていたので、ポンポンとカート入れていって決済しようとする。そういえばアプリ上で通販とかAppleの決済を通れないんじゃね?Kindleもブラウザから買うしか無いし。と思ったら店舗受け取りが設定できるので、最寄り店舗での受け取りを選んだ。手続きが終わった。あとは来るのを待つだけ。あ、そういえばアレも読みたかった。110円の本を再度カートに入れる。あれ、でも手数料とかどうなって──
──!?
店舗受け取りは一冊でも送料無料……!?
手数料もなし!?
本の値段は据え置きなのに!?
いわゆる中古書店の100円棚、200円棚というのはつまり、安い代わりに目的に合致する本があるかはわからない、探す手間を客に担保させる代わりに未整理の製品を安く売る、というトレードではなかったのか。
しかもなんか注文時にクーポン使えて500円くらい安くなったし、別途注文になったはずの本も併せて梱包してくれたし、店舗到着メールにも何故かクーポンがついていて次200円安くなったし(これは初回だけっぽい)、ヤバい。
おれは恐怖した。紙の本が、いま、人生で一番安いのでは、と。
先達は背中で雄弁に語る
確かに新刊でマンガを買う時、多くは電子書籍で購入している。紙で買ってるのはもう血界戦線しかない。ジョジョリオンとドリフターズも紙で買ってたけど、前者は完結したし後者は続きが一生でない。
Amazonのマーケットプレイスもまあまあ利用していたが、書籍は一律手数料が257円かかるので最安値でも258円になる。それでも読みたい本は状態問わずに買ってたけど、それが全部ブックオフでよくなったというのか……
それに、実店舗に行くメリットが消えたわけでもない。今まで全部無視していたが、アプリでは実店舗でしか使えないクーポンが数多く配信されていた。お気に入り登録した店舗で使える100円引きクーポンは、110円の本1冊にも使えた。読み古された新潮文庫がレジで10円になった瞬間、おれは震えていた。歓喜に?いや、恐怖にかもしれない……。
中でも一際激しいのが毎月29日、「ブックの日」に配信される、500円以上で300円引きのクーポンだ。110円の本を5冊買っても250円……普段は350円するから買わない本を混ぜても良いときた。このクーポンは29日限定なので、この日店舗に行くと同じように100円棚を真剣に眺めている人も見つかる。歴史小説のシリーズを束で掴みレジに持っていくおじさんの背中が雄弁に語っていた……若人よ、今しかできないことをせよ。どんな強大な力も、乗りこなして糧とせよ、と。
そしてブックオフオンラインを使うきっかけになった、かつての愛読書の再読。これがおれの読書熱に火をつけた。すでに結末も知っていて、自分好みでかつ面白いことが判明している本たちは、この世で一番読みやすい本だと言えた。そしてその勢いのままに、当時読んでいた頃には出ていなかった続刊や外伝、同一レーベルの関連作品、インタビュー記事や巻末で影響を受けたと語られている同ジャンルの作品や、引用されていた有名な名作文学等にシフトする。思えば昔は自分の中のアンテナが弱く、全然別のジャンルや関連しない作品に手を出して、文体の違いや前提情報の差による読みにくさで手が止まり、だんだんと本を読まなくなっていっていた。自分の中に張り巡らせたネットワークを辿り、脳内で作品同士を関連させていくことで自分にとっての意味が生まれる。能動的な読書の方法を、ここに来てやっと理解した。
そうして自分の好きな本たちを読んだ上で書いた新刊が、明日のイベントで出ます。すごい暗い話です。何を読んで書いたかは内緒です
そして部屋に本の街を作る
中・高生の頃に読んでいた本の再読が、おれの魂を中・高生に戻してしまった。好奇心に満ち溢れ、移動時間にラノベを一日二冊ペースで読みまくっていたあの頃に……。
前述の小説を書き終えた後、せっかく取り戻した読書習慣を定着させようと思い、改めてブックオフの小説100円コーナーを攻めた。好きだった作家の読んでないやつ、十数年前の名作のやつ、名前だけは知ってた古典文学、タイトルを言うのも気恥ずかしいくらいの有名作品……それらの初読は、どれも超面白かった。ライブ行き過ぎで素寒貧になったあとも、定期券内で行ける範囲のブックオフで定期配信されるクーポンを使って買った数冊を読んでいた。
そして去る29日、おれはブックオフに溜まった欲求を全てぶつけることにした。スマホ片手に定期券内のブックオフを巡りに巡って、300円引きのクーポンを駆使して読みたかったタイトルを買い漁った。web上でたまに見る記事の、本屋をあますところなく巡ってほしい本を買いまくるような企画、そのもっと狭くて忙しくて浅ましいバージョンのやつをやった。まだ何者でもない自分にはそのくらいがちょうどよかった。6店舗でしめて32冊を購入し、部屋の隅に新たなビルが建った。鞄が重すぎて、次の日の肩にダメージが残った。ここまで何を買って何を読んでいるか、具体的な作品名を頑なに言わないのは、人に話すとき「存じ上げないかもしれませんが……」と枕を置くことでナイツのコントみたいな空気になるくらい超有名なやつか、そうでなければ電撃文庫ばかり読んでるからだ。何らかの賞を受賞した作品ってどれもマジで面白い。映画とかアニメになったやつとかも。
悪の組織と手を組んだおれはこれからも小説を中心に本を読み、ゲームをなるべくやらず、小説を書いたりデザインをしたりするだろう。今後も部屋に新たなタワーを立てては崩していく……いや立ててる間に読んでない本の山が幾つも見つかった気もするが、とにかく……気の向くままに読んでいくだろう。それは悪の組織に管理されたディストピアかもしれないが、それでも未来は明るい……そう信じたい……。
後日
鷺ノ宮「……とまあ、最近はそんな趣でね。キミも悪の組織を利用するなら気をつけたほうがいいぞ。本が安すぎて、部屋が狭くなるからな」
友人A「なるほどね……。ところで鷺ノ宮くんは、図書館というものを知っているかい?」
鷺ノ宮「と……図書館……?」
To be continued
サポートしていただけると、ありがたい気持ちでブックオフに行くことができます