飛行機そのものは快適だったが……
搭乗した航空機はボーイング787-9でした。比較的小柄なわたしはエコノミーの座席に座ると若干の余裕があります。とはいっても横並び3席全部に人が座るとなんとなく窮屈に感じます。隣に座ったのはわたしと同じぐらいの体格の女性で、その点では助かりました。
出来るだけ体を動かしたかったので、あえて通路側にしたので窓から機外をうかがうことはできません。ただこの往路の航空機は夜に離陸しましたので外は見えません。
午後8時ごろに離陸してそれから1時間後に夕食が始まりました。
和食を選びました。
食後にお茶をもらい、あとは前席の背後にあるモニタでリアルタイムのNHKワールドプレミアムを見ながらくつろぎます。
ボーイング787-9は機内の快適さにも配慮した機材です。気圧は地上1800メートル程度、湿度も30%ほどに保たれており、少なくともその意味で言えば快適でした。
機内が暗くなったので、モニタを消し眼を閉じます。
すこしでも寝ようと思ったのですがここで子供が大声で泣き始めました。これ以降ずっとそのままでした。泣く子と鉄砲には勝てないというものの、睡眠を阻害されてしまうのには困ってしまいました。
こうなるのがわかっていたらノイズキャンセリングヘッドホンを買っていたでしょう。しかし今それを言ってもしょうがありません。じっと席で耐えるしかできません。
そして意外と飛行機のエンジン音が大きめであることもわかりました。つぎに乗るときにはヘッドホンを準備しておくのがよいかもしれません。
そうしているうちに夜が明けてきました。
「あと一時間ほどで到着いたします」
CAさんのアナウンスがあり、それを合図にしたようにエコノミー集団も動き出します。機体も降下を始め、エンジン音が巡航時とは違いうなりを上げ始めます。
本来ならばここで気分が高揚するはずでした。リゾート地に向けて。
ところがここでわたしの体調が急変しました。
「シートベルトサインが出ました、これ以降トイレは使用できません」
大変です、猛烈に気分が悪くなりました。あの朝礼で長時間立ったままでいるとき、血の気がスーッと引きながら気分が悪くなるあの感じです。もういっそ気を失ってくれればいいのですが、目の前が暗くなりながらかつ気分が悪い状態が続きます。
いっそ殺してくれ……
そんな思いを抱きながら、早く到着しないかと念じます。
ドコッ。
着地、そして逆噴射の音が機内に響きます。
着陸した…… 耐えたよ、みんな。
エコノミー集団の皆さんの表情はとても明るいのとは対照的に、わたしは死にそうな顔をして海外に到着したのです。
着陸し、降機が始まってもしばらくは席を立てませんでした。まだ調子がよくなっていなかったのです。
思えばこれが、気持ちの落ち込みが始まる前奏だったのかもしれません。
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