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日本海軍軍艦の艦内編制(1)概説、艦長/副長

 タイトル通り、日本海軍軍艦の艦内編制を説明していきたいと思います。
 初回は概説、艦長、副長、戦闘幹部について。

軍艦の乗員

 軍艦やその他の艦艇の乗員は、艦船令で規定していた。以下は軍艦の例である。

艦長
副長
内務長(昭和18年新設)
航海長
砲術長
水雷長
機雷長(昭和16年新設)
通信長
運用長(のち内務長)
飛行長
整備長(のち内務長)
機関長
工作長(のち内務長)
軍医長
主計長
副砲長
高射長
飛行隊長
分隊長(士官、特務士官)
乗組(士官、特務士官、准士官、下士官、兵)

 ここで掲げているのは最大公約数となり、艦によっては存在しない職もある。例えば飛行機を運用しない艦では飛行長、飛行隊長、整備長はいないし、機雷を搭載していない場合は機雷長はいない。
 それぞれの艦にどの職をどの階級で何人配属するかは内令である海軍定員令で規定されている。ここで挙げたほとんどは一名ずつだが飛行隊長は複数のことがあり(特に空母)、分隊長はたいてい複数、乗組は階級と兵科ごとに定数が決まっている。
 ここで挙げた職名は海軍省から発せられる辞令で示されるものであり、これ以下のレベルの職務は艦内編制令(内令)や艦船職員服務規程(達号)で規定されており艦長が指定する。

戦闘編制と常務編制

 戦闘編制は、艦長などの戦闘幹部と、各科(航海科、砲術科、水雷科、通信科、運用科、飛行科、整備科、機関科、工作科、軍医科、主計科など)で構成される。戦闘幹部を除く乗員はいずれかの科に配属されて各科長(航海長など)の指揮をうける。
 常務編制は戦闘編制を基礎として分隊を編成し乗員はいずれかの分隊に配属される。戦艦ではひとつの砲塔でひとつの分隊を構成するのを通例とした。駆逐艦では機関科員でひとつの分隊を構成する。小艦艇では全乗員でひとつの分隊とした。分隊長は科長が兼任することがあった。

艦長

 艦長はその艦の最高責任者であり、全乗員の指揮官である。艦船職員服務規程では、700条近い規定のうち第3条から第135条までと、全体の5分の1ほどを艦長の責務の説明にあてている。すべては説明していられないので欄外の分類を挙げると一般・教育・紀律・保安・艦政・賞罰・人事・航海・当直・機関・医務・経理・外交・雑件とある。これら全てが艦長の肩にかかってくる。
 艦長は一艦の長であり別格の扱いを受ける。大きな軍艦では公室と私室、専用のバスルーム、身の回りの世話をする従兵(ボーイ)がついた。

 なお「艦長」は厳密には軍艦(戦艦、航空母艦、巡洋艦、潜水母艦、水上機母艦、敷設艦)の長のみを呼ぶ。駆逐艦では「駆逐艦長」、潜水艦では「潜水艦長」、掃海艇では「掃海艇長」、特務艦では「特務艦長」などが正式な職名である。ただし艦長に関する規定は駆逐艦長などにも準用するとされており責任を負う内容が変わるわけではない。

副長

 副長は艦長の補佐役で、かつ士官室の取りまとめ役でもあった。副長という職は軍艦と特務艦にのみ存在する。副長を置かない艦艇では将校のうち最先任のものが先任将校として艦長を補佐した。
 副長は応急指揮官を兼ねており、戦闘などで損害を被ったときにはその対応をまず指示する責任がある。

戦闘幹部

 艦長をはじめとする艦の首脳部を戦闘幹部と呼んだ。艦長、副長、艦長附、副長附、伝声管や電話を通じて幹部の命令を各部に伝え、各部からの報告を受ける艦橋伝令などからなる。

おわりに

 次回は航海科、砲術科をとりあげます。

 ではまた次回お会いしましょう。

(カバー画像は軽巡洋艦最上)

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