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MMOにさようなら

俺が小学校5年生くらいの頃に突然パソコンがとても身近なものになり、同級生との会話にもサイバーカルチャーが頻繁に登場し始めた。
記憶に一番古いのは『おもしろフラッシュ』。学校ではほぼ毎日と言っていいくらい「おもしろフラッシュの○○が面白い」というやりとりがあった。
俺は幼少から母の兄による英才教育によってこの時には既にゲームヲタク、アニメヲタクの器を形成されていた。そこに颯爽と現れたインターネットがヲタク街道一本道を指し示す。

親がノートパソコンを買ってきて間もなく俺も触るようになり、引き寄せられるようにニコニコ動画に辿り着く。俺の人生は着実に陰の方へと拓かれていった。ニコニコ動画を知った頃からゲーム実況を観るようになる。最初の頃にハマって観ていたゲーム実況は確かPさんの高速マリオ実況とseven先生のGTA4実況だった。どちらも編集、実況スタイル共に小学生から中学生が好きそうなクソわかりやすい面白さで良かった。
しかし、最近Pさんの高速マリオを久々に観たらまぁまぁつまらなかったので、どうやらこれが大人になってしまったということらしい。
そして最近全然名前を見かけないseven先生も調べたところ、ニコニコ大百科の彼について語るスレのカキコミで2010年に既に実況から引退していた事を知った。当時の動画も殆ど削除済になっていて見つけられなかった。


ハリボテの寂しさを感じた。

話を戻して小6の時にもう1つ、後に俺がいつの間にかインターネットの虜になってしまう大きなキッカケに足を踏み入れる。
それが題のMMORPG、メイプルストーリーだった。
放課後は誰かの家に集まって遊戯王やらポケモン(確か当時はRS→DPくらい)に明け暮れていたのに、気づいたら集まる人数と頻度が減っていった。理由はみんな家に帰るとメイプルストーリーをやっていたからだった。
連鎖的に広まったMMORPGを各々が各々で自分なりの楽しみ方を見出していった。あるものはひたすら敵を狩り続け、またあるものはキャラクターを着飾るアバターに凝り、そして俺はギルドに加入したり、人の集まるマップに腰を据えて交流を楽しむチャット民として楽しんだ。
時が経ち、中学に上がるタイミングで引っ越ししたこともあって一度メイプルストーリーから離れ、新たな地での生活に勤しんでいた。そして中学の2年が終わる頃、クラスメイトとの何気ない会話でメイプルストーリーが再登場した。ここで一気にあの時の熱を思い出す。俺の中学生活に空いている穴はまさにそれだった。
しかし当時、新居にあったパソコンはMacだった。
当時のMacはオンラインゲームに対応していない事が殆どで、メイプルストーリーも例外なく起動しなかった。
あーでも諦められねえな。
そう思い、必死におじいちゃんを諭して数カ月後に学習用の名目でノートパソコンを買ってもらった。勉強なんかするわけなかつたのに。
ドキドキしながら数年ぶりにメイプルストーリーを起動する中3の俺。当時のアカウントのIDやパスワードを思い出せるか不安だったが、幾度も打ち込んでいたあの時のように脳死でログインした。
これで俺の学生生活が終わりはじめた。
チャット民として復活した俺はすぐにメイプルで交流を深め、たまたま県内に住んでいるクズみたいな人とフレンドになり、歳が近かったこともあって何度かオフ会もした。
その中では東京のフレンドも交え、俺と県内の人2人で東京まで出向くこともあった。その時は終電も忘れ遊び倒して、月曜の朝に学校と母親からの鬼のような連絡で起こされ、死ぬほど怒られたりもした。
少しだけ反省した俺は何とかギリギリ人の形を保って高校へ進学するが、遊びとバイトとメイプルストーリーに明け暮れた挙句、喫煙やバイクや他にも色々バレて、通っていた学校の歴史上最も長い謹慎別室指導約10ヶ月を言い渡される。
俺が通っていた学校には停学というシステムは無く、謹慎=隔離された部屋で反省と学業を強制されるものだった。
10ヶ月もの間ほかの生徒より早く登校して、遅く下校して、その上家に帰れば反省文と恐ろしい量の宿題をこなさなければならず、謹慎期間は携帯を学校の金庫に没収され、家に持ち帰ることも許されない。
無論高校の友達との交流は完全に無くなり、凄まじい速度で心が荒んでいく。
完全にやる気を無くした俺は、退学の方向へ向かっていた。
しかし、その話を聞き付けて度々家に来てくれた中学以来の友人達の支えによって、時には宿題を代わりにやってもらったりして何とか10ヶ月の謹慎を完走した。その後はクラスに戻ってもかなり浮いてしまって何かと肩身の狭い高校生活だったが、謹慎を終えたあとで仲良くなった保健室仲間(保健室にいつも溜まる奴)も居たりして、無事に卒業できた。
なにより、メイプルストーリーだけは取り上げられなかった。謹慎中の宿題が毎日4時間分くらいでてたので、放置ばかりでまともにプレイはできなかったが、気晴らしにチャットをしたりたまにフレンド達とスカイプで通話をすることが俺の精神面を支えてくれていた。
高校卒業後は就職して月残業150時間程のマジキチのブラック企業に務めだして、段々とプレイする時間も体力も奪われていき、最後は自分が作ったギルドのメンバーと仲違いした事から内部分裂が起きた所で熱が引いていき、メイプルストーリーから離れていった。

時が経ち、最後にメイプルをやってから8年か9年くらい経った。YouTubeをたれ流していると、メイプルストーリーのBGM集なる動画が再生された。
ノスタルジーと踊(ダンス)っちまった俺は、無意識にメイプルストーリーをダウンロードしていた。
流石に当時のIDとパスワード覚えてないかもな〜と思いながらログイン画面と向き合うと、スラスラと打ち込めるではないか。
あーやっぱ戻ってくるんだな、何度でも。

「2次パスワードを入力してください」

は?こんなんあった?
マジで思い出せねえな

仕方なくお問合わせフォームにパスワードリセットの旨を伝えるべく打ち込んでいく。

は?登録時のメールアドレス?
あー。

完全にわからんな。
まぁ、もう面倒くさくなってきたからいいや。
当時のフレンドなんてどうせ皆居ないだろうし。


さようなら
俺の時間を奪いまくったMMO
楽しかったよ


無垢な俺の前に突然現れてエロい事ばっか教えてくれた女にもう一回だけ会いたかったな。
チクショー!!

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