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東京国立博物館に行って感じたこと

昨日は有給を取り、東京国立博物館まで『横尾忠則 寒山百得展』を観に行ってきた。


上野駅の公園口を出て博物館までの道すがら、周辺の銀杏並木のツンとした匂いに癒され(秋なんだなあ。10月下旬だけれど、まだ汗をかく日もありますが)

東京国立博物館に来ている外国の方の多さに圧倒されながら

大好きな横尾忠則さんが「寒山拾得」を独自の解釈で描いた101点の絵画を、たっぷり一時間半かけて堪能してきました。


寒山拾得は中国、唐の時代の伝説的な詩僧であり、その奇行ぶりが「風狂」として、禅宗などで特に重視されるとともに、絵画の画題としてしばしば描かれてきたそうで

森鴎外や夏目漱石などの文学者にも大きな影響を与えてきたという、このモチーフじたいが大変興味深いものなのだが

横尾さんが描いた寒山拾得は、ドン・キホーテやアルセーヌ・ルパン、ゴッホやアインシュタインやランボー(詩人と映画と両方)、エドガー・アラン・ポーや江戸川乱歩などなど。それこそ多種多様で空想がぶっ飛んでいて、観ていてワクワクが止まらなかった。


横尾さんの作品には元々ユーモアが散りばめられているものが多いのですが、今回の展覧会はまさにそれが全開という感じで。

これら全てをコロナ禍のわずかな期間に描き上げてしまったのかと思うと、そのエネルギー量に脱帽するしかない。

一日一枚どころか、一日に三枚くらい描かれている日もあったりして(今回の展覧会には作成年だけでなく作成日まで記されているのでそれが分かるのだ)、もうかなりのご高齢のはずなのに、本当にすごいとしか言いようがない。


「風狂」という言葉は辞書を引くと、【仏教本来の常軌(戒律など)を逸した行動を、本来は破戒として否定的にとり得るものを、その悟りの境涯を現したものとして肯定的に評価した用語】だそうで

今の世の中には「風狂」のような考え方を受け入れる余裕はないかもしれないけど

資本主義にまみれた現代、今回の美術展には「金」と「承認欲求」、そして「こうあるべき・こうあらねば」に縛られた多くの人間に、冷や水を浴びせかけるだけのパワーはあるなと感じた。


少なくとも私はやられたのだった。

もっと自由に、もっと奔放に生きなさいよと。

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