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大学業界の今後を考察する

熟考する大学職員(@zyukkou)です。


twitterをしていると大学職員志望の方が多くいらっしゃることに気づきます。
"ラクそう" ”安定していそう” というような理由で民間企業からの転職を
目指す方も少なくありません。
実際、私の友人にも大学職員を志望する人がおり、志望動機の添削をしたことが何度かあります。

ただ、大学職員を志す人の中には "今後の大学は潰れる心配があるのではないか" と懸念している人も少なくありません。大学のお客様である受験生人口が減っている訳なので、当然の疑問だと思います。

そんな人たちに向けて、現役の大学職員である私が今後の大学業界について考察してみたいと思います。本当に簡単な考察なので、あくまでも参考程度にしていただければ幸いです。(※私は私立大学の職員なので、以下は主に私立大学の立場から論じています。)


結論から言うと、大学業界は現在「追い風」が吹いていると感じています。
その理由を以下に記載したいと思います。

1. 大学改革による私立大学入学定員厳格化

すでにご存じの方も多いと思いますが、ここ数年で文科省が大学改革に着手しています。中でも、大学経営に大きく関与している取り組みが"私立大学の入学定員厳格化"です。
簡単に説明すると、大都市圏の私立大学の入学定員を抑えることで地方にある大学の入学定員を増やそう という施策です。詳細は以下をご確認ください。(文科省作成資料)


これには一定以上の入学者を受け入れた大学には補助金の減額を行うというペナルティーがあるため、大学としては入学定員抑制に気を配らないといけなくなりました。

結果としてどうなったか?以下の通りです。
難関校を含め、各大学が合格者数を絞る→
受験生が安定志向になる→
難関校を嫌煙する→
中堅私立大学の難易度上昇・Fラン大学の入学定員増加

つまり、これまで安泰と思われていた難関大学・人気大学だけでなく経営の苦しかった大学がかなりの恩恵を受けているのです。この施策は、そういう意味で大学業界全体の先行きを明るくしたと思っています。
"大学は簡単には潰れない" という事実を強めたとも言えるでしょう。

2. 大学入学共通テストの導入

これは最も旬なトピックだと思います。ご存じの方も多いと思いますが、来年の1月より大学入学共通テストが導入されます。センター試験の後継として導入されるこの共通テストには、英語外部試験の導入や数学・国語における記述式の導入が予定されていましたが、これらの導入見送りが発表されました。
本当に文科省に振り回されて、高校生は気の毒だと感じます。

さて、この大学入学共通テストの導入が大学業界の追い風とどのように関係があるのか?それはズバリ以下の通りです。

①受験生の安定志向を促進させる
受験生としては、新しいテストを受けるにあたって当然不安があるわけです。過去問題もないわけですし…そこで安定志向に拍車がかかります。自分の実力相応校よりも2ランクレベルの低い大学まで受験するように指導している高校もあります。結果として受験生1人あたりの受験数が増え、各大学で志願者増(特に中堅以下大学)が予想されます。

②推薦入試の人気が上がる
理由は上記①と同じです。新しいテストを受けずに年内中に合格が出る推薦入試は、受験生からするととても安心なわけです。面接・小論文で勝負ができるのですから。特に指定校推薦入試は、ほぼ合格が確約されている入試になるので各大学で推薦入試による入学比率は上がる傾向になるでしょう。年内中に入学者がある程度確保できるというのは、大学経営にとってとても好ましい状態なのです。

3. 給付型奨学金および授業料減免制度の導入

これも文科省主導による施策の大きな目玉でしょう。住民税非課税世帯に対して、入学予定の大学の授業料減免および給付型奨学金の支給が決定されました。18歳人口が減少している日本においては、今後大学入学者が増える見込みはなかったのですが、このような措置により、経済的な理由で大学入学を断念していた人が進学できることとなります。これは、頭打ちとなっていた大学進学者を微増ながらも増加させる可能性を秘めているという意味で、大学業界にとっては追い風となります。この制度の詳細は以下をご確認ください。


これらの理由により、今後の大学業界は追い風ムードになっていくものと思われます。ただ、子供の数が減っていることは紛れもない事実なので、まだまだ安心はできませんが…少なくとも制度上は大学業界にとっては都合のよい状態になっているということです。

大学職員を志す人に少しでも参考になれば幸いです。

今後は就職先としてオススメの大学の条件など、関心の高そうな記事を投稿していこうと思います。