『ビオレタ』

寺地はるなさんの作品。

婚約者から婚約破棄されてしまった妙は雑貨屋ビオレタで働いている。ビオレタの店主である菫さん、菫さんの元夫の千歳さん、菫さんと千歳さんの子である蓮太郎。

妙のことをそれぞれの方法で受け止めてくれる菫さんと千歳さんは、素敵な人だと思った。特に千歳さんは、一緒に話してみたいと思った。イスリロンにとても納得した。恋愛だけでなく、物欲などにも当てはまることだと思った。自分だったら、棺桶に何を入れるだろうか。

印象に残っている文

樹璃菜と玲緒菜という、やたら画数の多い名前の娘たちの目の部分だけを黒い線で隠した画像を頻繁にネットで発信するのが好きなようだ。なんか犯罪者の画像みたいだねと言ったら、あやうく失禁しかけるぐらいの剣幕で怒られた。

痩せぎすの、イソップ童話に出てくるキツネみたいな印象の人だ。

「なにイスリロンって」「あちこち歩き回ってさ、へとへとのときに椅子見つけたら思わず座るでしょ。駅のホームとかね、ああいう椅子。そういう恋愛のこと。駄目な恋愛のこと。あたしの持論」

「だってそうだろう。後輩に仕事を教えるのは先輩の仕事なのに。それをしないのは怠慢だ。できないんなら無能だ」

「あんまり、自分は駄目だ、なんて言わないほうが良いよ。そういう奴らは萎縮してる相手を見て満足するんだ。人を見下して喜ぶようなくだらない奴にサービスしてやる必要はないよ。相手を貶めたら自分が良くなるってわけでもなかろうに」

「おやつ、ってことば、かわいいよね」

「そんなにいろいろ考えなくても。ひとつでいいんじゃない。なにかひとつ大切な信条があれば、その他の小さいことなんて後からついてくるよ」

事実なら誰かれ構わず言ってもオッケーなどというルールはこの世にないのだ。

「他人のほうが、気楽なこともあるから。ぶつけたり、吐きだしたり、預けたりする相手は」

「人の言動を深読みして、利口になったつもりかな。でもその利口さが、一体なんの役に立つ。お前、自分で自分の心を暗くしてるだけじゃないか」

「自分にとって、一番大事なものをちゃんと知ってるってこと。お母さんは、それが『一人前』ってことだと思ってる。」

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