『四十歳、未婚出産』

垣谷美雨さんの作品。

主人公は旅行会社に勤める四十歳の宮村優子。

ある日、優子は出張先で二十八歳の部下の水野と男女の関係になり、妊娠してしまう。

水野の言動や上司のマタハラにイライラした。

未婚女性を取り巻く日本社会の悪い部分が書かれていると感じた。

優子も優子で周りの人に嘘をつかなくても良かったのではないかと思った。

凡庸さんは器の大きい人間だと思った。彼のような人間と籍を入れることができて、優子は本当に良かったと思う。


印象に残っている文

田舎の年寄りの正直な物言いは、心にグサリと突き刺さるが、自分を客観的に見られなくなっていたことを教えてくれる。

田舎の年寄りの考え方には隔世の感があり、不快になることが多すぎた。古い感覚の人間に真っ向からぶつかっても暖簾に腕押しだと、この歳になれば嫌というほど思い知らされてきた。だから言い返したりはしない。そういうことが積み重なって、会話の内容はどんどん薄まっていき、終いには天候の話しかしなくなり、世代間の溝は広がっていく。

男の孤独は女のそれよりも深いように思う。女同士なら、いい年をして本音をぶつけ合って親しくつき合うこともできるが、男はプライドが邪魔をしてそうはいかないことが多いのではないか。

「通訳を雇ったり日本語の特別授業を組んだりすればいいのにね。どうしてそういった予算が出せないんだろうね。いったい日本て国は金持ちなのか貧乏なのか、よくわからない」

「いったいこの国はどこへ向かってるんだろうな。家族や子供を大切にしようとすると、たくさんの壁が立ちはだかるよ」

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