『神さまを待っている』

畑野智美さんの作品。

文具メーカーの派遣社員として働いていた水越愛は、退職して借りていた家も引き払う。


雨宮のように何度も連絡してくれる人は迷惑かもしれないが、連絡しようとしてくれること自体がありがたいと感じる。

ナギやマユやサチ、山本さんといった人々の話を聞いて、辛くなった。

最後に愛が父に対してきちんと言うべきことを言えたのは、とてもよかった。

巻末の参考文献の量に驚かされた。


印象に残っている文

しかし、雨宮の就職が決まった頃から、話せなくなった。どんなに怒られても同じレベルにいたはずの友達が、遠くへ行ってしまったように感じた。

嫌われてもいいという関係は、楽だ。今後に何があっても、ここの事務所で働きたくなるとは思えないから、言いたいことをなんでも言える。

二十三歳なんていう嘘は、とっくに通じなくなっている。貧しさがわたしたちを老けさせたんだ。

大学のボランティアサークルにも、こういう人がいた。いつも笑顔で、誰にでも優しくて、子供が大好きで、貧しい国に小学校を建てることを目標にしているような人たちだ。常に嘘をついているようにしか見えなくて、わたしは彼らや彼女たちが苦手だった。

体育座りでしか入れないような狭い浴槽でも、シャワーだけより何倍も気持ちいい。

出会い喫茶でも、「神待ち」という言葉は、聞いたことがある。帰る場所のない女の子たちを泊めてくれる男の人のことを「神」と呼ぶ。

お金を稼ぐことだけを考えて生きるうち、人間として大切な感情が欠落してしまったのかもしれない。生活するために、お金は必要で、軽く考えない方がいい。けれど、人生には、もっと大切なものがある。そのことを忘れてしまうと、お金も入ってこなくなる気がする。


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