『花のベッドでひるねして』

よしもとばななさんの作品。

幹    拾われた子。

野村くん 幹の幼馴染。祖父に弟子入りしていた。

祖父   亡くなってしまった。吸い寄せる力があった。


感想
幹は捨て子であるが、家族に大事に育てられる。捨て子だから自己肯定感が低いというわけでもなく、自分なりに幸せに生きている。
お母さんが幹を拾ってくる場面がとても面白かった。
この作品に出てくる野村くんが個人的にである。

そんな弱ったときはやることだけとにかくやって、あとは家族に頼んで、のんびり寝てしまえばいい。だれのせいにもしないで、ひたすら天に身をまかせて、疲れを地面に吸い取ってもらえばいい。
料理を作っている母の姿は幼い頃から変わらず私を落ち着かせた。計算された手順、落ち着いた態度、美しいリズム。たとえ世界が終わってもこの安定感は変わることがないと思えるような、今しか見ていない真剣な、しかし力の入っていない様子。
「違うこと」を選ばなくてはいけない、人にはそういうときもある、そういうときはそれが違うことだと毎日のように自覚して調整すればいい、とよく祖父が言っていたのを思い出した。
「いつまでだっていちばん好きな人を心に抱いたり、夢に見たり、思い出したりするんだ。自分の中にいるその人の面影は、その人であり、ある意味ではその人ではない。自分の一部、自分のいちばん良き部分なんだ。」
リビングのソファでよくこうしてうたた寝をして、父と母の会話が聞こえてきたものだった。特別な話ではない、なんていうことのない話。まるで波のように前に聞いたようなことをくりかえしている話、それこそが宝なのだ。
なにかが大きく動くときには、いいことも悪いことも同じだけ起こる。
私の中にあるもうひとつの目が、世界の側にとって力を取り入れる窓なのだ。だから私がどういうふうに世界を見るかを世界は見ている。


よしもとばななさんの作品の中で私が好きなものの一つである。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?