『兇人邸の殺人』

今村昌弘さんの作品。

屍人荘シリーズの第三弾。

今作では、剣崎と葉村が生ける廃墟として有名なテーマパークに行く。そこの中にある「兇人邸」に班目機関の秘密が隠されているという。


途中で不木を殺した人物があっさりと自供していて、驚いた。

最後に巨人から逃れるために剣崎さんが兇人邸から脱出するシーンは、3者の意図と信頼が噛み合って成功してすごいと思った。

巨人の正体は意外な人物だった。巨人が首を切断して殺し続ける理由を知って、こんなにも悲しいことがあるのかと思ってしまった。


印象に残っている文

その名の通り馬越市なのかヨーロッパなのか国なのかよく分からない、西欧風の建築とみんぞくいしと地元の特産品をごった煮にした園内を、今考えれば商標権と著作権の両面で問題のあるマスコットキャラクターが闊歩する、片田舎のテーマパークだったという。

自分にやましいことがあるのなら、会話の主導権を握った方がいい。

「分かったでしょ? 確かに脱出の手段はあるけれど、それを使うことで状況がより悪化する可能性がある。これは私たち自身が留まることを選ばざるを得ないクローズドサークルなんだよ」

「違うよ。すごいのは椅子に座る探偵じゃない。探偵の元に必要な情報ばかり持ち寄る、情報提供者だ。彼らは必要不可欠な情報ばかりを選び抜き、探偵に与えてくれる。それを無意識のうちにやっている君たちこそ特殊能力者だよ。取り扱う情報の量が探偵とは段違いなんだ」

「ワトソンだから比留子さんの隣にいるんじゃない。これからもあなたと生き抜くために、ワトソンという手段を選ぶ。体質だろうが因縁だろうがどうでもいい。俺たちにとってましな結果を得るために足掻き続けたい。俺は自分一人の平穏で満足できるほど、慎ましくはないので」


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