『ぷろぼの』

楡周平さんの作品。

大手電器会社の人事部に所属し、上司の江間からの命に従ってリストラを行う大岡。

ある日、大岡がリストラで対応した社員が自殺をしてしまい、大岡はプロボノ団体のもとへ足を運ぶ。


次々に出てくる江間のアイデアが恐ろしいもので、同じ会社にいてほしくないと思った。

早期退職をするかしないかは、家族を持つ者にとってかなり難しい決断だと感じた。

プロボノで雇った2人が専門性を活かして、無事にハッピーエンドになってよかった。

プロボノがラテン語だとは知らなかった。


印象に残っている文

同僚の首を切るのは忍びない。何で俺がこんな仕事を、という気持ちは常に抱いている。しかし、仕事は選ぶものではなく、与えられるもの。それが組織の中に生きるサラリーマンの宿命だ。職務を全うできない組織人に居場所はない。切らねば、自分が切られることになるーー。

同期にでさえ、こと会社のことに関しては、本音で語りあえないのが人事部員の辛いところだ。

「プロボノってプロフェッショナルなスキルを持ったボランティアのことなんじゃーー」「違います。プロボノは、『公共の利益のために』ってラテン語のpro bono publico の省略形なんですよ。みなさん、よく勘違いなさるんですが」

プロボノ志願者には、共通した雰囲気がある。「なんのために働くのか」「自分は社会の役に立っているのか」目まぐるしく変化する時代の中で、自分の存在意義を見いだそうと、救いを求めてやって来る。疲弊し、憔悴し、いまにも押し潰されんばかりに覇気がない。

はじめて部屋に入る男。そんな言葉を聞かされれば、大抵の男はイチコロだ。

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