『猿の悲しみ』

樋口有介さんの作品。

過去に同級生を殺害してしまった前科を持つ風町サエは、羽田法律事務所で働いている。

ある日殺人事件が起こり、サエは調査をしていく。


サエが同級生を殺してしまった理由が、悲しかった。

サエが聖也に対して愛情を持って接しているが、聖也がそれをうっとうしく思っているのがこの年代の息子っぽいと感じた。

表紙の女性は最初サエを表しているかと思っていたが、段々と凜花のことを表しているのではと考えた。


印象に残っている文

そういえば息子の聖也も、江戸川で釣ってきたハゼやなんとかという水生昆虫を飽きずに飼っているし、男というのはどうしてこう、つまらないものに執心するのだろう。

「歳ももう三十四でしたし、男の子って大人になると、こまかいことまで母親に報告しなくなるものですよ」

クリームあん蜜がきて、美月がカップにスプーンを使いはじめ、そのタヌキがキャバクラ嬢に化けたような顔に気合いを入れる。一応は思考をめぐらしているような表情でもあり、ただトイレを我慢しているような顔でもある。

真須美も表面的には「偉い」とか「住む世界がちがう」とか佳菜の生き方を肯定しているが、内心には女としての嫉妬がくすぶっている。そんなことがなぜ私に分かるのか、もちろんそれは私が、女だから。

「フグの毒と同じなの。フグは餌からとり入れた毒を体内に蓄積させるだけ。だから養殖のフグに毒はないでしょう」

また面倒な課題がふえてしまったが、どうせ私は面倒という名前の服を着て歩いている、ただの猿なのだ。


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