『朝が来る』

辻村深月さんの作品。

子宝に恵まれなかった夫婦に養子として迎えられた朝斗。ある日、夫婦のもとに朝斗の実の母親が現れる。

最初の子ども同士のトラブルがとてもモヤモヤした。嘘によって自分の子どもが悪者にされるというのは、気分が良くないと思う。その後の保護者同士の関係も難しくなると感じた。

不妊治療はお金だけでなく、かなり精神的な労力がかかることだと感じた。

ひかりが子どもを産んでからの人生が、とても読んでいられなかった。

これからきちんと罪を償って、また朝斗と向き合うことができればと思う。


印象に残っている文

ここで流されて、朝斗を信じないことは、あの子を手放すことと一緒だ。親であることをやめるのと一緒だ。

事情があって生まれた子どもを育てられない母親と、望んでいても子を授かることができない夫婦との間で、子どもが赤ちゃんのうちに養子縁組を結ぶ、「特別養子縁組」は、子が成長してから行う普通養子縁組と違って、戸籍上も、子どもは夫婦の実子として登録される。

無理なのだ、と思っても、けれどまだ、人間は期待をしてしまう。この日々に終わりが来るのではないかと、光など、見えないとわかっていても、前を向いてしまう。

その瞬間、思った。恋に落ちるように、と聞いた、あの表現とは少し違う。けれど、佐都子ははっきりと思った。朝が来た、と。

この人は、ひかりのために何か言っている、わけではない。ただ、気持ちを落ち着けるために、自分を頷かせたいだけだ。自分の望む、元通りの状態になったかどうかを、頷かせて、確認したいだけなのだ。

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