『ペットショップボーイズ』

竹吉優輔さんの作品。竹吉さんの作品は初めて読む。

ペットショップで働く学人とフリーターの幸多の物語。


柏木さんは周りのことをよく見えていて、良い上司だと感じた。

エキノコックスについては聞いたことがあったが、人間が非好適宿主であることは知らなかった。

幸多と幸多のお父さんとの話が一番良かった。幸多のツッコミがとても面白かった。

印象に残っている文

僕たちも店長のことが嫌いだが、蛇蝎の如く嫌われているという表現は正しくない。店では、蛇もサソリも扱っている。だから、蛇蝎以上に嫌われていると言った方が正しいだろう。

実はペットショップは、用品の売上が大部分を占める。

「あんたの気持ち、すっげーわかるけど耐えなきゃ。この仕事は売れ残りを可哀想と思う前に、何としてでも売ろうと思わないと駄目なんだ。同情で飼ったら、他の売れない子達に対して向き合えなくなる」

「いいね」僕はとりあえず、好意を抱いている女の子に対して、男達が有史以来繰り返してきた言葉を口にする。

この子の言葉選びが楽しい。この子の優しさが愛しい。この子が笑ってると、僕は嬉しい。引っ込み思案な僕なのに、なんだか陽光の中の彼女を見ていると、急に好きだと伝えたくなった。

「姐さん、あのね。イモリのオスは、繁殖期に身体全体が紫がかるんです。それで、紫の尾をメスの前で必死に振るんです」

「イモリのオスが出すフェロモンは、ソデフリンていう名前なんですよ。万葉集から名前を取って……面白いですよね」

こんないい奴をシカトするなんて、クラスメイトはどうかしている。ただ、世の中には通り雨のように悪意が突然降りかかるような時もある。そして、誰もレインコートや傘など持っていないのだ。悪意が去ってもびしょ濡れの身体は疲れ切って、下手をすれば風邪を引いたり、それが長引いたりしてしまうーー。


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