『カレーの時間』

寺地はるなさんの作品。

カレー食品メーカーに勤務していた祖父と孫の桐矢の物語。


祖父が頑固で男尊女卑的な考えをしているため、初めはあまり共感できなかった。

祖父がいきなり桐矢の仕事のことを「はし」と言い始めたときは、全く意味が分からなかった。しかし、その後に言葉の意味がわかってグッと来た。

「どこでも温かいカレーを食べられるようにする」という発想がすごいと思う。インスタント食品を考えた人は天才だと思う。

祖父がレトルトカレーの箱にメモをしているのが愛らしいと感じた。

物語の冒頭で祖父に食事を与えてくれた人が幸せな人生を送ってほしいと思った。


印象に残っている文

みんなはちゃんと理解しているんだろうかときょろきょろしていると、先生に首根っこを摑まれて平手打ちされた。よそ見をするのはけしからんと言っていたが、おれがよそ見をしていることに気づいた先生も、たぶんきょろきょろしてたんだろう。

『眠れる森の美女』の祝宴に呼ばれなかった十三番目の魔法使いもかくやと思われるほどの怒りようだ。

どっちにしろ子どもっていうのは程度の差こそあれ、周囲から傷つけられるものだ。だから、みんなはやく大人になりたがる。

「そう、橋や。橋をかけるのがお前の仕事やないか。お前の橋をピースカレーが渡っていく。みんな喜んでくれる。橋がなかったらあっちとこっちはいつまでたっても行き来でけへん。橋やで。大事な役目と思わんか」

よりヤバいことをするやつがかっこいいみたいな思想を押しつけないでくれ。バカなのは許されるけど腰抜けは許されないみたいな世界観に、ぼくを巻きこまないでくれ。男ってバカだよな、と確かめ合うのはけっこうだが、ぼくをそこに含まないでほしい。

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