『鎮憎師』
石持浅海さんの作品。
大学のテニスサークルの部員が起こした心中事件。それ以後、サークルのメンバーと被害者の女性は遠ざかってしまった。しかし、テニスサークルの部員同士の結婚により、被害者の女性がサプライズで登場する。
冒頭の回想がとても後味の悪い結末だった。
ひろみの話した院生と助教の関係についての推理が、とても興味深かった。
ひろみの真実については、さすがにわからなかった。
何かあった時には、鎮憎師さんに相談したいと感じた。
印象に残っている文
一年でいちばんいい季節は、上着がなければ少し肌寒いくらいの、今頃じゃないだろうか。
「ーーそんなこと、思ってません」紙に書いたものを読んでいるような口調だった。つまり、思っていたということだ。
弁護士先生にベンツとはベタすぎる取り合わせだと思うけれど、叔父曰く、これも演出なのだそうだ。決して偉ぶっているわけではなく、「弁護士といえばベンツ」という顧客の思い込みを充足してあげることによって、信頼を獲得できるらしい。
女という生き物は、見込みがないと思えばさっさと切り替えるくせに、小さなことでもこだわってしまったら、徹底的にこだわってしまうものなのだ。