『人生オークション』

原田ひ香さんの作品。人生オークション、あめよびの2つの話が収録されている。

「人生オークション」は、就職しないでいる主人公と夫から接近禁止命令を出されている叔母さんが、叔母さんの私物をオークションに出して整理する物語。

「あめよび」は、ラジオのハガキ職人からステップアップできないでいる彼と、検眼士の彼女の物語。


「人生オークション」では、読んでいくうちに叔母さんが可哀想に思えてきた。

ときに主人公が叔母さんに注意する場面があるが、主人公も人のことを言えないのではないかと思った。

「あめよび」に出てきた「秘密と嘘」という映画を見てみたいと思った。

自分に諱というものがあるのか分からないが、日本らしい風習だと感じた。


印象に残っている文

二人ともまだ四十代なのに、なんか、桃太郎が来る前の、おじいさんとおばあさんみたいだった。

なんだか、それは叔母さんがこの数ヵ月やってきた人を困らせることの集大成みたいに見えた。

「あんまりにもいいものを買ってしまうと、結局、持って行く場所がなかったりするのよね」

「嫌なの、もう嫌なの。無理なの。なんで私の気持ちがわからないの? なんでわかってくれないの? わかろうとしてくれないの? 私はあなたと純粋に結婚したいだけなの。何かあなたから奪おうとか、あなたを束縛しようとか、そういうことを思ってるんじゃないの。ただ、あなたと一緒にいたいの。一緒にいて、いろんな喜びや悲しみを分かち合いたいの。いろいろ話したいし、一緒に体験したい。それのどこが悪いことなの? 私をそこらの結婚を夢見てる女や、ただ、三食昼寝つきの生活を望んでる女や、苗字を変えたいだけの女と一緒にしないで」

「検眼はお客様とのダンスだ」というのは、権藤さんの言葉だった。「とにかく、彼らの眼に集中するんです。彼らの眼の動き、息遣い、表情、ちょっとした言葉の揺らめき、さまざまなレンズを入れ替えて、どちらの方がよく見えるのか、どうよく見えるのか、彼らの言葉だけではわからない情報を五感のすべてを使って集めるのです。彼らに集中して、ダンスを踊るときのように息遣いまで感じて、近づいて」

「ルンペルシュティルツヒェン」

「おかしくないか。職場や学校に変なやつがいても、周りの人のせいにはならない。だけど、家族だけは変なやつが一人混じっていただけで、家族全員が後ろ指さされる。変なやつがいるかいないかは、職場や学校と同じ、運なのに」


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