『しょうがない人』

平安寿子さんの作品。平さんの作品は初めて読む。

サプリメントの販売会社でパートをしている日向子の周りで起こる話がメインである。


日向子と典子の会話は、読んでいてとてもモヤモヤした。

日向子が娘のことを心配する「思春期モンスター」が一番印象に残っている。子が思春期を迎えた時に親がどのように接するかは、考えるのがとても難しいと感じた。

「マダムごめんなさい」というネーミングに笑ってしまった。


印象に残っている文

典子は、自分以外の誰かが話題の中心になるのがイヤなのだ。

「自分で言ってるだけだもん。本当にえらい人は、自分で言わなくても人が言ってくれる。自慢する人は、自分が言わなきゃ誰も言ってくれないって証明してるようなもんじゃん」

「素敵だわ。尊敬します。わたしも、おかあさんみたいな(おばあさんになりたいと言いかけてあわてて修正)、年の重ね方をしたいです」

年寄りは風邪による発熱で、足腰が立たなくなることがある。ただし、熱の自覚がない。だから、「立とうとしたが立てない」現実にパニックを起こす。よくあることだそうだ。

となると、日向子の対人センサーは自動的に〈当たり障りのない反応〉装置を作動させるのである。

人の恋愛談は聞いて楽しいものではないが、振られたとなると一転して、頬がゆるむ。大変、心地よい。

この世には、女が嫌う女というのがいる。その特徴は、同性の目から見ても明らかなセックスアピールだ。際立った美人ではないが、男の目を意識する本能が備わっており、表情や仕草のひとつひとつになんともいえない媚びがある。男に愛されることが生きる目的になっている女たちだ。

「わたし、死ぬのは怖くない。これ、ほんとよ。孤独死だって、構わない。耐えられないのは、生きてるのに、ずっと一人でいることなのよ。ずっと一人だとね、日向子さん、人って笑わなくなるのよ。わたし、できるだけ最後まで、誰かとしゃべって、笑っていたい。死ぬときは一人でも、直前まで誰かと話して、笑っていたい。死んだあと、ついさっきまで笑って話してたのにって、言われたい」

夫という存在は、どうして年をとるとほとんど全員、厄介者と化すのだろうか。好きだから結婚したのに、好きではなくなるのだ。ああ、悲しい。

のどかというのは、社会的には無能ということだ。彼は熊と相撲をとらない金太郎、鬼退治に行かない桃太郎、立派な侍になるための旅に出ない一寸法師なのである。

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