『拳に聞け』

塩田武士さんの作品。

便利屋で働いている池上省吾は、ある日ボクシングジムに立ち退きを迫っている女性を見かける。


プロは勝ち方までこだわらないといけないのが、大変そうだと思った。

勇気が小鳥好きで、話すと止まらなくなるのが面白かった。

浜田省吾の歌が出てきたことが印象に残っている。

省吾には再び頑張ってほしいと思う。


印象に残っている文

サドルないやんけーー。ついでに鍵も華もないママチャリを前に、省吾は呆然とした。どうせ客から処分を頼まれた自転車だろう。サドルがない以上、座ることができない。

「痩せるのには一生懸命でも、ボクシング自体には興味がないらしいわ」「体は分厚いのに、情は薄いね」

ボクシングの試合には三人のセコンドがつくが、全員にライセンスが必要なのだ。セコンドライセンスはジムの会長がJBCに申請するのだが、一般的には三、四年の経験が必要とされている。

「『練りもんは親の敵にでも会ったように揚げるそばからかぶりつくようにして食べなきゃ』って、池波正太郎先生が何かに書いとったなぁ」「それは天ぷらや。冷めた練りもんは関係ない」

「あんた誰やねん?」「ビル・ゲイツの遠縁のもんです」「えらい距離ありそうやな」

男の場合、時計の針を巻き戻すのに歯の浮くようなお世辞はいらない。ほんの少し言葉を交わしただけで、会話にリズムが出てきた。

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