『スナックちどり』

よしもとばななさんの作品。


感想
スナックでの話かと思いきや、旅行中のお話。さっちゃんと同じように、私もスナックちどりによって癒された。ちどりはなんて強い人だと思った。両親が亡くなって、育ててもらった祖父母も亡くなってという状況が僕にはとても考えられない。
作中に出てきたクリームティの描写がとても美味しそうだった。イギリスに行ったときはぜひ食べてみたい。

印象に残っている文

人間は成長した地点から昔に戻ることはできない。それが成長の代償なのだ。
反射的に人の求めるほうへ顔を向け、困った人がいればなんの見返りも求めずどぶに手を突っ込んでも助ける。そういう人だった。
「人がいないときのあんたは何なの?だれもいなくたって自信がなかったらだめなんじゃないの?って私は言いたくなっちゃうんだよね、ああいう人気者に対しては。」
「自分自身のことを愛してない人といると、それだけでとてもつらいし、苦しいんだ。」
人はほんとうになにかをしてあげることは、常に少し痛みのあることなのだと思う。
全てはこの町が見た夢なんだと思えてきた。この町が見せた、ではない。この町が、私とちどりの夢を見たのだ。
「ひたすら皿を洗ったり、ふきんでふいたり、ばかほど洗濯物干したり、シーツ換えて腰痛めたり、なんかそういうのがないと、人との関係って深くはならないんだよ。どうしたって。どうしてだかは知らないよ。でも、そういうふうにできてるみたいだね」
人は人を変えることができない、私が傲慢だったのだ。そしてなんと、人は自分を変えることさえもなかなかできないのだ。形状記憶合金のようにひたすらに元の場所に戻ろうとする、それがどんなに苦しい場所であろうとも。それが人間なのだ。
「この世には美しさが全くないものは一個もないんだ。見つけるほうの目にそれがあれば、どんなものでも美しさを持ってる。」

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