『さがしものが見つかりません!』

秋山浩司さんの作品。秋山さんの作品は初めて読む。

大阪大学の二回生の山月は、物部と花子さんと共に学生会の抗争に巻き込まれていく。


大阪大学を舞台とした話だとは思わなかった。

マキマキのイベントにウォーリーのような格好で参加する山月が、とても面白かった。

物部がMFLというサークルを立ち上げた理由が、とても意外だった。物部にとって、良い結果になったと思う。


印象に残っている文

大阪大学と聞いていたので、私はてっきり大阪の中心地にあるものだと思っていた。なぜなら大阪大学は大阪府が誇る大阪府の最高学府のはずだからである。しかし、その所在地は大阪市からは遥か遠く離れている。梅田や難波などの繁華街からも離れた北の果てだ。

「花子さん。ここは何をするサークルなんだい?」「知りません」即答である。

「山月くんに入って欲しいな」ーーそして微笑。その瞬間、私のなけなしの決意は霞となって霧散した。

そして建築の学生を一番に苦しめる課題は、圧倒的に設計製図である。各回テーマを与えられ、各々創意工夫を凝らして、カフェテリアだの小学校だのを創出するというものだ。自由度が高い分、とにかくこれほどまでに建築学生の本領が試される課題は他に無い。そして自由度が高いということは、二極化が起こりやすいということでもある。やる気の『ある』者は幾夜も寝ずに、独創性豊かな素晴らしい作品を創り上げ、『ない』者は締切りの直前も直前になって資料集に似た建物を求め、場当たり的に済ませるという具合に。

総じてこのメイクアップは、今まで『高嶺の花』という具合だった彼女を、富士の山頂まで押し上げたような、そんな雰囲気だった。


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