『プロジェクト・ヘイル・メアリー』

アンディ・ウィアーさんの作品。

献辞にビートルズのメンバーの名前が書かれていて、なぜだろうと不思議に思った。主人公がなぜ宇宙船にいるのか全くわからない状況で物語が始まった。主人公と一緒に考えるのがとても楽しかった。振り子の揺れ具合で遠心力を計測するシーンが印象に残っている。主人公がまさか教師であるとは思わなかった。

ところどころビートルズのネタが含まれていて、とても嬉しかった。「ロッキー」は個人的に好きな映画なので、エイドリアンというネーミングセンスがとても良いと思った。


印象に残っている文

一〇フィートの梯子。いまヤード・ポンド法で考えた。これは手がかりになる。ぼくはたぶんアメリカ人だ。あるいはイギリス人か。カナダ人という可能性もある。カナダ人は短い長さにはフィートとインチを使う。

「金星は地球に比べると非常に速いスピードで動いています。つまり追いつくだけでもさらに多くの燃料が必要なのです。理想的条件がそろっていたとしても火星へいくより金星へいくほうがより多くの燃料が必要なのです」

自分の子どもを愛しているという理由で咎めることはできないし、子どもの教育に口をはさんでくる親にどこまで我慢できるかは神のみぞ知るだが、何事にも限度というものがある。

「ちょっと待ってください! ぼくはモルモットということですか? ぼくはモルモットなんだ!」「いいえ、そういうことではないのよ」と彼女はいった。ぼくは彼女をじっと見つめた。彼女がぼくを見つめる。ぼくが彼女を見つめる。「オーケイ、たしかにそういうことよ」と彼女はいった。

「これを飲んで」「なんですか?」「このすばらしい清潔なコックピットにゲロをぶちまけるのを防ぐためのものです」

「ここではそういう途方もない量のエネルギーを扱っているから、“ニューヨークの電力何年分”で考えるクセがついているんだ。ちなみに一年分はアストロファージ約〇・五グラムに相当する」

重力があるとカップを、ないとパウチをさしだすのは、考えてみるとなかなかクールだ。〈ヘイル・メアリー〉のイェルプレビューを書きこむときには忘れずに書くようにしよう。

肺が、一〇〇本のナイフがダンス対決しているのかと思うほど痛い。

「産業革命は農業を機械化した。そしてそれ以来、わたしたちはほかのことにエネルギーを注げるようになった。でもそれは過去二〇〇年間のことよ。それ以前は、ほとんどの人が人生の大半をみずからの手で食料をつくる作業に費やしていた」

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