『限界集落株式会社』

黒野伸一さんの作品。

経営コンサルタントの優と止村に住む正登と、正登の娘の美穂の3つの視点から物語が進んでいく。


減農薬というものがあることを知らなかった。

農家が一つにまとまるというのがいかに難しいかということを学んだ。

役所の人が都合の良いときだけ近づいてくるのが、とても嫌だと感じた。

3人の研修生がそれぞれの特性を生かす場面が、良かった。


印象に残っている文

正登はため息をついた。田舎こそ、そういう都会人を受け入れるのに、いい加減うんざりしているんだ。

そもそも経営者は、現場の業務など深く知る必要はないのだ。知ってしまえば、どうしても情が生まれる。自社製品が時勢に合わなくなっても、もの作りに固執する。こういう輩は、経営者失格だと優は思う。

「農家というのは、まあ、個人主義の人間が多いんだよ。だからまとめようとするのは至難の業なんだ」「そうよ。集落営農って、土地をひとまとめにして、全員で耕すってことでしょう。反発が起きるのは目に見えてる。みんなご先祖様から受け継いだ土地を、大切にしているから。他人に勝手にいじられたくないのよ」

「各地域で決められている通常の栽培法より、農薬・化学肥料を五十%以上削減して作るのが、減農薬だ」

「美穂ちゃんなら分かるでしょう。米農家に米作り辞めろって言うのは、母親に子育て辞めろって言ってるようなモンだよ」

自給率を上げなければ、日本はそのうち大変なことになるなどと、テレビで視聴者をさんざん脅しておきながら、次のコーナーでは、どこそこの高級フレンチが美味いだの不味いだのと言っているのが、この国の食糧危機の実態である。

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