『愛じゃないならそれは何』

斜線堂有紀さんの作品。

「ミニカーだって一生推してろ」、「きみの長靴でいいです」、「愛について語るときに我々の騙ること」、「健康で文化的な最低限度の恋愛」、「ささやかだけど、役に立つけど」といった話が収録されている。


「健康で文化的な最低限度の恋愛」が一番印象に残っている。

好きな人の趣味などに染まっていくのはいいこともあるが、果たしてこの後は一体どうなってしまうのだろうか?

無理をしすぎてしまうと、後に悪い影響が出てしまうのではないか。


印象に残っている文

人気アイドルが、一般人へのストーカー行為で逮捕されたら、どんな結末が待っているだろう。

「いつか売れるかもしれないっていうのは信仰だよ。道半ばで倒れる殉教者になる可能性はいくらでもあるし、私はゴルゴダの丘まで十字架を背負って行くのかも」

アイドルになると、男友達は単に友達と表記するし、力仕事をやってくれるのは全部兄ということにする。

それにしても、どうして「幸せそう」という形容は恋人同士の関係にしか使われないのだろう?

そう。妃楽姫と妻川の関係は始まる前からエンドロールを迎えた映画のようなものだ。

喩えるならば、自分が注文したメニューとは違うものが来た時の顔をしていた。オムライスではなく、カレーライスが来てしまった時の顔だ。

園生と新太が一人の時は、私の話をしているんだろうか。自分の葬式を見てみたいのと同じ気持ちで、その場に居合わせたくなる。

『大人になると、達成出来ることって少なくなるじゃないですか。仕事で成果を上げるとかは確かにあるんですけど、それは俺だけの成果じゃないし、でも、山はちょっとずつ出来ることが増えていって、達成出来るゴールが増えていくんですよ。自分で目標を立てて、それを達成する。それが繰り返せるのが登山なんです。』

そもそも、社会人の三か月は短いものだ。会う努力をしなければ、数回すら会えない時間感覚だ。

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