『テンペスタ 最後の七日間』


深水黎一郎さんの作品。
主人公の賢一は弟から姪っ子を一週間預けられる。
姪っ子のミドリは9歳という年齢ながら、大人顔負けの屁理屈や悪口を言いまくる。
ミドリに気付かされる部分がいくつもあった。
最後は少し悲しかったが、ふたりとも幸せに暮らしていってほしいと思った。
 
 
印象に残っている文


大人は次の機会に埋め合わせをすれば良いだろう、くらいの気楽な考えで簡単に子供との約束を反故にすることがあるわけだが、当の子供にとってその経験は、大袈裟に言うとこの世界そのものへの不信感の萌芽にもなりかねないのだ。

その年代の子供の、人の心の奥底まですべてを見透かすようなあの目が怖い。
そうなるともう何を見ても同じに見えてきて、似合うでしょ、と訊かれると似合う気がするし、ダメかなあと訊かれるとダメな気がしてくる。

実は美術研究で一番大切かつ一番難しいのが、あらゆる先入観や既成概念を捨てて、虚心坦懐に絵を〈観る〉ことなのである。

その意味では子供はみんな〈詩人〉なのであり、大人はみな自分の中に、虐殺された詩人を葬っているのだ。

翻訳や通訳などの語学屋仕事は、一般に〈自由業〉の代表のように思われているが、先方の都合に一〇〇%こちらが合わせなければいけないという点で、実はかなりの〈不自由業〉なのだ。


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