『世界の中心で、愛をさけぶ』
片山恭一さんの作品。
テレビドラマ化や映画化されている。
ドラマや映画は見たことがない。
朔太郎と白血病になったアキの物語。
冒頭にアキが亡くなったことが書かれているので、読み進めるのが非常に辛かった。
朔太郎の祖父の恋愛の話も強く印象に残っている。
祖父の言葉を聞いて、朔太郎だけでなく私も深く考えさせられた。
印象に残っている文
彼女に恋をしていることは、ぼくがぼくであることと同じくらい自明な事柄だった。
一人で生きる人生は、ただ長く、退屈なものに感じられる。ところが好きな人と一緒だと、あっと言う間に分かれ道まで来てしまうのである。
「あの世って、この世の都合で作り出されたものの気がしない?」
「アキが美味しいと思えば、ぼくのお腹は満たされるし、アキが嬉しいことは、ぼくが嬉しいことなんだ。それが人を好きになるってことだよ。」
「わたしがいちばん恐れなくちゃならないのは、病気が治らないことじゃなくて、病気のせいで性格が悪くなってしまうことかもね。」
「いまここにないものは、死んでからもやっぱりないと思うので。いまここにあるものだけが、死んでからもありつづけるんだと思うわ。うまく言えないけど」
「アキの誕生日は十二月十七日だろう」「朔ちゃんの誕生日は十二月二十四日ね」「ということは、ぼくがこの世に生まれてからアキがいなかったことは、これまで一秒だってないんだ」
祖父「人生の美しさというものは、実現しなかったことにたいする思いによって、担われているんじゃないだろうか。実現しなかったことは、ただ虚しく実現しなかったわけではない。美しさとして、本当はすでに実現しているんだよ」
この世界には、はじまりと終わりがある。その両端にアキがいる。それだけで充分な気がした。
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