『永遠をさがしに』

原田マハさんの作品。

原田マハさんと言えば、絵画など芸術に関する本のイメージがある。しかし、この本は音楽に関する本だ。

世の中の人々は「父親が天才指揮者」「母親がチェロの名手」と聞いたら、「その娘はとても天才な音楽家になるだろう」と反射的に思ってしまうだろう。私もそうである。そのような世間の勝手な期待や、両親からのプレッシャーなども受け、子どもはどれほどの苦痛を強いられるか。

和音がこれからどんなチェロ奏者になっていくのが続きを見てみたい。


登場人物がみんな良い人だ。その中でも特に文斗が好きである。

何気なくしている和音への気遣いがとても素晴らしいと思った。


聴力を失うということが想像もできないが、そのような状況でも前を向いて生活している真弓がすごい。

もろくて、はかなくて、繊細で。まるでーーうつくしい楽器。たとえて言うなら、ヴィオラのような。この人は、お母さんとは真逆だ。図太くて、しぶとくて、見るからに打たれ強そうな。そう、打楽器だ。ティンパニみたいな人だ。
音を奏でない楽器ほど、寂しいものはない。人の手に触れられ、音楽を奏でてこそ、楽器は初めて楽器になるのだ。
「時代をクリアに映し出してる音楽はなんでも好き。でも、時代を超えて人の心を打つ音楽は、もっともっと好き」
それは、あまり経験したことのない感覚だった。寂しさに似た喜びのような、きのうよりは少しだけ大人になったような、けれどまだ少女のままでいたいような。
「お前のお母さんも、真弓も、ほんとうに聴きたいと思っているのは、技術的に完成された演奏じゃない。お前の心の演奏なんだ」


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