『タイムマシンに乗れないぼくたち』

寺地はるなさんの作品。以下の作品が収録されている。

コードネームは保留、タイムマシンに乗れないぼくたち、口笛、夢の女、深く息を吸って、灯台、対岸の叔父


「コードネームは保留」「口笛」が特に印象に残っている。

「コードネームは保留」では、自分を殺し屋という設定で生きているOLが主人公である。もし自分にコードネームをつけるとすれば、何にしようかと考えた。

「口笛」では、幸せはそれぞれの形があるため、人の幸せを邪魔してはいけないということを学んだ。

「タイムマシンに乗れないぼくたち」では、主人公の草児が転校先でなかなか馴染むことのできていない様子が書かれている。博物館や図書館のように家と学校以外の第三の場所が重要だと感じた。博物館で男と出会ったことで、草児は新しい一歩を踏み出せたのだと思う。


印象に残っている文

クレームを言う人はクレームを言う行為そのものが目的みたいなところがある。

彼女たちの話を聞けば「そういうふうに考えるんだなあ」と思うし、小野塚さんの話を聞いても「なるほどなあ」と思ってしまう。けれども、どちらかに「わかる」という態度を示さなければ即座に八方美人の称号を与えられることもまた、わたしはよく知っている。

「わたしもカレーにしようかな。カレーって、人が食べてると食べたくなるよね」

しあわせとやらが一種類ではないことぐらい、わたしたちはもうちゃんと知っているはずだ、そうではないのか、と思いながら、初音はペダルを強く踏む。それなのにわたしたちは、「女の」しあわせから離れていく者に「どうして」「どうして」と問いかけてしまう。

十枚切りの食パンはこんがりいい色に焼けている。きつね色、という表現があるが、わたしはトーストを見てきつねを連想したことはない。

ぜんぜん関係ないけど、この「面持ち」という言葉、すくなくともぼくは「沈痛な」とセットでしか使ったことがないのだが、他の人はどうなのだろうか。

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