『愛が嫌い』


町屋良平さんの作品。
以下の話が収録されている。

しずけさ
愛が嫌い
生きるからだ

「愛が嫌い」がとても印象に残っている。
「しずけさ」では、いつきくんがとても可哀想だと思った。真夜中に自分の家を追い出され、朝まで川の近くで過ごすというのは嫌だなと思った。
「愛が嫌い」のぼくのように、女友達の子どもの面倒を見るというのはどのような気分なのだろう?

印象に残っている文

かれの世代が夢のように浴びてきた、良識と同調の塊がかれの人間を打ち負かした。

これでもかれは会社では穏当でめったに感情を露にしないビジネスマンだった。不機嫌さで会話を支配するようなこともなかった。

この世のシステムは、なにかを強制する者よりそれに消極的同調をしめす者で成り立つのだ。

きっと自分よりもっと上の世代は、人生が長いだなんておもうことは許されなかっただろう。だれしも、ふつうのはげしさに揉まれた日常、労働、家族計画をおくっていて。

目を離さなくても子どもはあらゆる危険にさらされていて、手をはなすのは危険だと、自戒してもほんの一瞬で子どもは大人の世界を飛び越えてしまう。子どもの運動は大人の視界にはあらわれえない。

深夜のファミレスで働く醍醐味はひとのいない真夜なかをしっかり眺められることだ。

ほんのすこし開いている裏門にはいつものように「本校の関係者以外立ち入り禁止」の看板があるのだが、中高生は平気で校庭を使用しているし、こっちには子どもがいるのでまず注意されることはない。きわめて埼玉的光景であった。

大学時代に曜日感覚を壊し、就活時代に自尊心を壊し、サラリーマン時代に自律神経を壊した、そうした時間を丸ごともどし、ひとりでも生きていけるような逞しさを、みにつけたい。


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