『とにもかくにもごはん』

小野寺史宜さんの作品。

子ども食堂を始めた波子とそれに関わるスタッフや近所の人、食べに来る人に関する物語である。


この物語の舞台設定が、子ども食堂の営業日の1日だけであるということがすごいと感じた。

航大はさまざまな子どもたちに話しかけていて、とても偉いと思った。自分だったら、あそこまで話しかけられないと感じた。

波子さんの子ども食堂に対するスタンスがすごいと思った。多くの人は何かしらどうしても見返りを求めてしまうだろう。

子ども食堂に出てくる豆腐ハンバーグが美味しそうだった。

最後にエイシンくんが出てきた場面を読んで、胸が温かくなった。


印象に残っている文

結局、普通の人たちが始められることが大事なのだ。経済的にも時間的にも、無理をすると続かない。だから月二回のペースでやる人たちが多い。

スーパーで売っているおにぎりは常温保存だったりもするから冷たくはないが、温かくもない。温かくないごはんは、やはり冷たいと感じる。

「僕が子どもだったら、やっぱり女の人がやってる子ども食堂に行きたいと思うもんね。男の人がやってたら行かないってわけじゃないけど。女の人がいてくれるとほっとするよ。何かもう理屈じゃなくてさ。」

子どもは一様にかわいいわけではない。かわいい子もいるが、そうでもない子もいる。難しい子も多い。まったくしゃべらない子。こちらの目も見ない子。目は見るのにしゃべらない子。やっとしゃべったと思ったら、うるせえな、だったりする子。ちょうどいい子はあまりいないのだ。子どもはこちらがやりいいようにはしてくれない。こちらが望んだ形でこちらの顔色を窺ってはくれない。

お金持ちと言われたくらいでお金持ちは怒らないのだ。気持ちに余裕があるから。

さまが付く言葉がわたしは好き。お日さま。お月さま。神さま。仏さま。太陽と言うよりはお日さまと言いたいし、月と言うよりはお月さまと言いたい。

「ごめん。答えたくなかったら答えなくていいよ」言ってから思う。かつてわたしも何度も大人に言われたセリフだ。答えなくていいと言われて、じゃ、答えません、とは言えないでしょ。答えないわけにいかないでしょ。言われるたびにそう思った覚えがある。なのに、今は自分が言っちゃってる。

松井家のみそ汁にはいつも豆腐が入る。豆腐とわかめとか、豆腐と長ネギとか、豆腐と白菜とか、豆腐とえのき茸とか、必ずそんな組み合わせになる。豆腐が中心。豆腐に何を組ませるか。アルゼンチン代表のフォワードはまずメッシ。そのメッシと誰を組ませるか、みたいなもんだ。豆腐はメッシ。そこは固定。

「ありがとうはね、言ったほうの負けじゃないですよ。言ったもん勝ちですよ」 

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