『ニュータウンは黄昏れて』


垣谷美雨さんの作品。

母頼子と娘の琴里の目線から物語が進んでいく。

頼子と琴里は青木葉団地に20年以上住んでいるが、まだローンが残っている。売りに出すことも考えたが、資産価値は下がる一方だ。ある日、琴里は三起子から黛という男性を紹介され、一緒にオペラを観に行くことになった。


琴里と三起子、朋美の3人の関係がとても興味深かった。

三起子と琴里がした行為は、自分だったらできない。朋美が一番の勝ち組のように思えるので、朋美が不幸にならなくてよかった。

お金があっても、幸せとは限らない。自分にとっての幸せが何かを把握していないと、物事はうまくいかないということを感じた。

持ち家と賃貸はどちらがいいのか。バブル崩壊や災害など、この世ではいつ何が起こるかわからない。自分にとってどちらが良いのか、考えていきたい。


印象に残っている文

疲れているときに献立を考えるのはつらい。だけど女はみんな毎日考えなければならない。主婦業に定年はないのだから一年三百六十五日、夫が死ぬまでずっとだ。

老人たちは、車の運転はなかなかやめないが、自転車に乗るのは早々にあきらめるらしい。

老人たちは何も悪いことはしていない。にもかかわらず、自分たち現役世代が老人たちの犠牲になっていると感じてしまう。自分の不遇を誰かのせいにしたくなる。

住むという、ただそれだけのことが、どうしてこうも大変なのだろう。

いったい何が幸福で、何が不幸なのか。誰が本当の勝ち組で、誰が負け組なのか。ハッキリしているのは、幸不幸も勝ち負けも自分で答えを出すしかなく、人それぞれで違うということだ。

「安心して住める環境を手に入れるって難しいですね」

イギリスは階級社会である。初対面の人には、どこに住んでいるかを最初に尋ねる。住んでいる場所によって、相手の階級がわかり、その暮らしぶりや仕事内容や学歴までが透けて見える。

「三起子、別にそんなに悲しむことじゃないと思うよ。子供の頃に仲良しでも、それぞれ違う環境で育って大人になれば考え方も生き方も変わっていくでしょ。新しい出会いがあって新しい友だちができる。それでいいじゃない」

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